第2次安倍内閣の発足からきょうで5年になった。10月の衆院選をはじめ国政選挙に5連勝し、盤石な体制を築き上げた安倍晋三首相。来秋の自民党総裁選で3選されれば、超長期政権も視野に入る。
 政権の原動力になってきたのが経済重視の姿勢だ。なのに地方には恩恵が及ばず、5年のうちに大都市圏との間に深い溝ができた。大企業優先で富の偏在をもたらすアベノミクスの限界が見えたと言っていい。軌道修正すべきだ。
 「新三本の矢」「地方創生」「1億総活躍社会」…。看板の掛け替えで目先を変えてきた面は否めない。今度は少子高齢化をにらんだ「人づくり革命」を打ち出した。
 これまでのスローガン政策の実効性が乏しかったことの裏返しではないか。期待感で国民をつなぎ留める手法がこのまま通じるのか疑問だ。
 しかも、当初から掲げた「デフレからの脱却」は道半ばというのが現実である。
 日銀による「異次元」の金融緩和にもかかわらず、2%の物価上昇目標はいまだに達成されていない。「副作用」さえ生じている。
 長引く金融緩和で、日銀が保有する国債は膨らみ続ける。金融市場をゆがめているとの批判は絶えず、リスクを懸念する声が高まっている。
 確かに円安が進み、大企業の収益は改善されたが、賃金は伸び悩み、個人消費は低迷したまま。地方は「実感なき景気回復」どころか、貧困と格差の深刻度が増す一方だ。
 安倍首相は、二つの顔を使い分けてきた。選挙戦では経済を前面に出す一方で、選挙後には「タカ派」の政策を押し通す。安全保障関連法や特定秘密保護法、「共謀罪」法など異論が強い重要法案を次々成立させたのがいい例だ。
 その延長線上に思い描いているのが、憲法改正だろう。憲法9条に自衛隊の存在を明記する案を提唱。「スケジュールありきではない」と弁明するものの、2020年の改正憲法施行に意欲を見せる。
 ただ、それは「独り善がり」と言わざるを得ない。改憲の必要性という点で、国民の意識との間に乖離(かいり)があるからだ。各種世論調査の結果からも分かる通り、多くは改憲に向けた今の拙速な議論に違和感を覚えている。求める政策の優先順位が改憲ではないことは明白であろう。
 政権は長ければ、いいというわけではあるまい。有権者の飽きを招きやすく、おごりや慢心といった「おり」も沈殿しがちだ。その象徴は学校法人森友学園、加計(かけ)学園を巡る問題ではなかったか。
 「安倍1強」の下、人事を完全に握られた霞が関で、「総理のご意向」という忖度(そんたく)をうかがわせる記録文書が出てきたのもうなずけよう。
 政治に緊張感をもたらすのは健全な野党の存在である。離合集散を繰り返す惨状は結果的に政権長期化を手助けしている。立て直しが急務だ。