訪日外国人旅行者や国民が出国する際、1人1000円を徴収する「国際観光旅客税」が、2019年1月7日から導入される。
 恒久的な国税の新税創設は1992年の地価税以来、27年ぶりだが、議論がどれだけ尽くされたか疑問が残る。
 政府は22日、「環境整備」「情報発信強化」「体験型観光」の3分野に充てる方針を決定。3カ月分の税収を見込む18年度予算案には、空港の入国審査での顔認証導入や文化財の多言語解説充実といった事業が計上された。
 安倍政権は昨年3月、「明日の日本を支える観光ビジョン」を決定した。東京オリンピック・パラリンピックが開催される20年の訪日外国旅行者数を4000万人とする目標を掲げた。この際に観光施策実施のため、「受益者の負担」による財源確保策に言及している。
 ただ、「出国税」という具体的な話が急浮上したのはこの夏以降。観光庁が有識者検討会を設置して議論を始めたのは9月15日。わずか2カ月、7回の検討で中間取りまとめを観光庁長官に報告した。
 それが18年度の税制改革大綱に反映。しかも、当初は19年4月からとされていたが、3カ月前倒しになった。あまりにも性急すぎないか。
 出入国の円滑化や地域の観光インフラの整備など、訪日客受け入れには多くの課題が指摘されており、対応への財源は欠かせないのも確かだ。
 海外では、米国が「ESTA」と呼ばれるオンライン渡航認証システムの申請手数料として、外国人旅行者から14ドル(約1500円)を徴収。多くが観光財源となっている。
 韓国では出国納付金として国内外問わず航空旅客から1万ウォン(約1000円)を徴収している。英国、フランスなどにも航空旅客税などが存在する。
 検討会取りまとめでは、こうした事例を踏まえ、税額を「1000円を超えない範囲」と提言した。東京五輪前の財源確保がまずありきで、取りやすいところから反発が出ない程度に「広く浅く」という思惑が透けて見える。
 16年の訪日客数と日本人の出国者数は、計約4000万人。実現すれば、観光庁には年間約400億円の税収が入る。同庁の17年度当初予算210億円の倍近い巨額だ。
 今回の新税は「目的税」となるが、特定財源ではなく一般財源。目的税は本来、受益者が負担する。政府が使い道の基本方針を決め、縛りをかけるのは当然だ。
 無駄遣い防止と透明性確保も図るというが、観光は産業としての裾野が広い。監視機能が働かなければ、抜け道がいくつもできそうだ。
 年明けの通常国会には、関連法案が提出される。必要性や税額の妥当性はもちろん、使い道やそのチェックまで、納税者が納得できるような説明、議論が必要だ。