東日本大震災の被災地を含む東北経済の眼前に、労働力不足が厚い壁となってせり出してきた。
 2020年の東京五輪・パラリンピックを前に、東京一極集中は拍車が掛かる。復興需要が陰りを見せ、好況の波が及ばない地方経済は今、瀬戸際にあるのではないか。
 東北の有効求人倍率はバブル期並みの水準にある。11月は1.49倍に達し、過去最高を更新した。リーマンショック後の世界金融不況に覆われた09年は0.33倍だった。
 雇用統計は絶好調に映るが、実感できる東北の経営者はいかばかりか。
 宮城の11月の月間有効求人数は5万9982人で、震災があった11年の月平均の1.5倍。一方、有効求職者数を見ると11月は3万6272人と11年の6割にも届かない。
 産業別の偏りは著しい。11月の医療福祉分野の新規求人数は宮城で3774人。全産業の19%を占めた。高齢化がハイペースで進む東北にあって、介護需要に人材供給が追い付かない。
 10月に青森市であった北海道東北知事会議は、地域経済を支える人づくり推進に関する決議をした。
 席上、高橋はるみ北海道知事は「人手不足を改善しなければ地域の疲弊は止まらない」と強調。「地方は働く条件が悪いとさらに人が減る」(達増拓也岩手県知事)「介護人材の確保は大きな課題」(三村申吾青森県知事)など現状を危惧する声が相次いだ。
 東北の人口減、高齢化の深刻さが、労働力不足でより鮮明になってきた。地域社会の基盤が揺るがされる状況にありながら、政治と現場の温度差は悲劇的だ。
 先の衆院選で、安倍晋三首相は有効求人倍率の上昇を前面に出し、東北各地で経済政策「アベノミクス」の成果を訴えた。与党圧勝の選挙結果に、村井嘉浩宮城県知事は「アベノミクスは成功している」との認識を示した。
 果たしてそうか。円安、株高で沸く大企業と、地方の中小零細企業の格差は2極化し、拡大の様相を帯びる。
 賃金が象徴する。17年度の地域別最低賃金は最高の東京が958円。東北は宮城の772円が最高で、青森、岩手、秋田は738円と全国最低クラスだった。地方は人手不足で業績回復を阻まれた上、人材の確保と定着のため大手との競合を迫られ、賃金の上昇圧力にさらされる。
 国内経済を押し上げる過度な金融緩和は、常に潜在的なリスクを抱えている。ほころびが出れば、影響を真っ先に受けるのは体力を奪われ続ける地方だろう。
 今なすべきことは、国は行き過ぎた一極集中を是正する政策誘導であり、地方は雇用状況の冷静な分析に基づく産業政策の再構築だ。
 私たちの足元の暮らしを支えるのは、中小零細企業であることを再認識したい。