年末年始の帰省ラッシュが始まった。新幹線の安全性を本当に信頼していいのか。東海道・山陽新幹線「のぞみ」の異常に気付きながら運転を続け、台車に亀裂が見つかった問題である。
 JR西日本のずさんな運行管理の実態が27日、改めて明らかになった。床下点検を求めた現場の要請を、東京指令所の指令員が聞き逃していたという。考えられない人為ミスにあきれ果てる。
 亀裂は脱線につながりかねない深刻なトラブルだった。運行に携わる関係者は安全優先の原則に立ち返るべきだ。
 「のぞみ」は11日午後、博多を発車し程なく乗務員が異臭に気付いた。車内に漂うもや、うなるような異音も次々と確認された。
 岡山駅から乗車した保安担当者が電話で「新大阪駅で床下点検をやろうか」と東京指令所に要請。指令員はこの時隣席の指令長とやりとりし受話器を耳から離していた。提案は伝わらなかったという。
 互いに再確認もせず認識のずれが解消されないまま運行は継続されることになった。
 不可解なのは、こうした経過があるのに、新大阪駅でJR東海に運行を引き継ぐ際、乗務員は「走行に支障はない」と伝達したことだ。
 懸念があるなら東海側と相談し再度点検を求めることもできた。一連の経緯はコミュニケーション不足では済まされない。リスク管理の放棄と言われても仕方あるまい。
 再び異臭がして運行停止したのは名古屋駅。最初の異変確認から約3時間後だった。
 点検で明らかになった台車枠の亀裂の状態を見れば、思わず身をすくめたくなる。
 車体と車軸を支える台車枠は、底面、両側面に十数センチの裂け目ができ、あと3センチを残して破断寸前。乗客は16両に約千人。高速で脱線すれば大惨事は免れなかったろう。
 なぜ鋼材製の部材がねじ切れる間際まで傷んだのか。全国を走る車両でも起こり得るなら一大事だ。直接の原因を早急に突き止めてほしい。
 JR西日本は、乗客ら107人が亡くなった2005年の尼崎脱線事故後、「人命を預かる責任を自覚し、安全第一を積み重ねる」などの安全憲章を制定した。教訓は浸透していないのではないか。
 各地の在来線や私鉄でも架線切れや停電などが最近相次いでいる。鉄道事故の社会への影響は大きいが、新幹線トラブルは別格の重さを持つ。
 会見で吉江則彦副社長は「新幹線への過度な信頼があり事故への感度は低くなっていた」と社内意識を戒めた。
 定時運行は大動脈・新幹線に課された使命だろう。だが社員が安全神話にすがり、基本をおろそかにしたとしたら本末転倒ではないか。
 今回、大事故を免れたのは幸運にすぎない。安全を脅かす体質は組織挙げて改善すべきだろう。信頼回復の道はそれしかあるまい。