東京電力福島第1原発事故で生じた宮城県内の汚染廃棄物の処理問題は、根本的な解決への一歩を踏み出せないまま、今年も越年する。
 原発事故から間もなく7年。汚染廃棄物を抱える地域住民は、いまだ日常を取り戻せないまま。遅々とした政治の対応を嘆かざるを得ない。
 県は27日、大崎、石巻、黒川、仙南の4圏域の広域行政事務組合代表の首長と会合を開き、一斉開始を前提とした試験焼却を「順次開始」へと方向転換した。準備の整った地域から2月以降、順次行っていくという。
 自治体が原発事故の後処理で翻弄(ほんろう)される現実に改めて違和感を覚える。問題の解決を、被害者である市町村に委ねるのは矛盾している。圏域で足並みの乱れが生じないのか、懸念が残るやり方だ。
 放射性物質に汚染された廃棄物のうち、濃度が国の基準(1キログラム当たり8000ベクレル)以下の稲わらや牧草は宮城県内で約3万6000トン。放射性物質汚染対処特措法により一般ごみと同じ扱いとされ、市町村が処理責任を負う。
 汚染廃棄物を巡る県や市町村の対応は二転三転した。動きだしたのは2016年春。県内で基準値を超える「指定廃棄物」の最終処分場問題が棚上げされた後だった。
 県は同年11月、県内の自治体などが持つ焼却施設で一斉処理する方針を発表。全35市町村長を集めた会議に提案したが、全会一致に至らず結論を翌年に持ち越した。
 今年6月、県は一斉焼却を断念し、汚染廃棄物を保管する自治体が圏域ごとに個別処理する方針に転換。7月の市町村長会議で合意され、今秋の試験焼却開始が決まった。
 しかし、大崎市や石巻市であった説明会は、焼却場や焼却灰の最終処分場がある地域の住民から風評や健康被害への不安が噴出。両市は関連費を予算化できず、年内着手は断念を余儀なくされた。
 安全を担保するデータや風評被害対策が不十分なまま進む県や市町村の議論は、住民の不安を呼び起こす一因になっている。反対する住民や市民団体の活動は各地で活発化し、「福島集約」の声すら出始めた。これもまた原発事故がもたらした悲しい現実だ。
 放射性物質は時間とともに自然減衰する。特措法上、指定廃棄物が基準値を下回れば一般ごみとされ、自治体の処理負担は刻々と増えることになる。現在の仕組みは、国が汚染廃棄物の問題を市町村に押し付けているように映る。
 指定廃棄物の最終処分場問題は14年1月の候補地決定から2年間足踏みし、頓挫した。県は今回、汚染廃棄物の18年度の本格処理を目指す。首長たちは覚悟を迫られている。堂々巡りを回避する手だてはあるのだろうか。
 国は傍観者ではなく、当事者として前面に立ち、特措法の再構築を含めた政治責任を果たす義務がある。