景気の拡大局面は「いざなぎ」を超え戦後2番目の長さになったという。国内総生産(GDP)は名目で10%以上も伸び、雇用情勢は歴史的と言える改善ぶりを示す。
 第2次安倍政権が発足してこの5年で確かに経済指標は好転した。「アベノミクス」の成果だと政権は胸を張る。
 しかし、それは一面的な評価にすぎない。地方は景気回復の実感に乏しく個人消費は低迷したまま。格差解消も進まない。そんな現実がある。
 同時に、アベノミクスは経済を市場や民間に委ねるのではなく、政府が関与して人為的に力ずくで動かす。春闘の賃上げがそう。そうした「官製経済」の側面を併せ持つ。
 そのリスクについて議論し軽減・解消を図ることが必要だ。「副作用」として一部が顕在化しているからである。
 緩やかな景気回復に寄与したのは、企業の業績を改善させた円安であり、株高だ。
 輸出に有利な円安をつくりだしたのは、アベノミクス「第1の矢」である日銀の「異次元」金融緩和だ。市場から従来の倍の国債を購入することで、世の中に大量のお金を流し金利の低下を促した。
 株高は、公的マネーによる官製相場がもたらした。公的年金資金が株式の運用割合をぐんと増やし、日銀も緩和策の一つとして多額の株価連動投資信託を購入することで、相場を押し上げてきた。
 アベノミクスは人為的に、超低金利の状況をつくり、為替を円安にし、株価をつり上げてきた。問題なのは、この状況が5年近い長期に及んでいることだ。その結果、副作用が現れてきている。
 低金利は、借金(国債)依存を助長し政府に財政規律を失わせた。一方で金融機関は運用難・業績悪化に苦しむ。
 株式市場や国債市場は、正常な取引機能がゆがめられてきた。特に公的マネーの株投資は、企業の経営や業績とは無関係に広く薄く行われるため、本来なら市場があぶり出す問題企業の姿が見えにくくなった。そんな批判がある。
 この投資は、より大きなリスクもはらむ。株価が暴落すれば、年金資金と日銀が被る打撃は以前の比ではない。年金給付に悪影響を及ぼすだけでなく、日銀の財務を損ない通貨価値の安定をも揺るがしかねないからだ。
 最も心配なのは金融緩和の行方だ。円安には効果的であっても、低金利下で投資や消費を活発化させるという本来の目的は達成できていない。
 緩和は前代未聞の「壮大な実験」とも言われた。実験はデフレ脱却という結果を得られず今なお続く。国債は買われ続け、どんどん供給されるお金で市場はあふれかえる。尋常でないそのさまを想像しただけで空恐ろしくなる。
 米欧は既に金融政策の正常化へとかじを切った。官製経済のひずみが拡大し日本経済に混乱を招く前に、政策転換の道「出口」を探るべきだ。