効率化を追求する過程で私たちが失ったものの一つに地域の個性が挙げられるだろう。多様性を積極的に評価する時代となった半面、都市から田舎まで金太郎あめのような街となり、大量流通で消費も画一化が進んだ。経済合理性がもたらした一面である。
 長く、それぞれの土地で栽培され、人々に親しまれてきた野菜や果樹、穀類などの「在来作物」も同様だ。
 野菜を中心とした農作物は育てやすく、味も見た目も均質のものが市場流通に乗って届く。種苗会社が開発した品種が農家の間に普及するにつれ、地域固有の作物がすっかり減ってしまった。
 それが今、地域ブランドとしての価値にスポットが当てられ、再興しつつある。希少性、独自性が魅力となっているからだ。
 全国の多くの自治体が、失われつつある独自の作物を再発掘し、地域づくりに活用しようと、さまざまな取り組みが進んでいる。
 先進地である山形県では、山形大農学部有志らが2003年に結成した「山形在来作物研究会」が県内に150以上ある在来作物の保存と利用推進の活動を展開している。
 宮城県でも13年に「みやぎ在来作物研究会」が発足し、個性豊かな在来作物を地域の宝と位置付け、掘り起こしと普及に取り組んでいる。
 在来作物は、私たちの食生活を豊かにするだけでなく、各地方の伝統文化そのものを継承することでもある。地域に根差した食材を地方創生の武器として活用するムーブメントを起こしていきたい。
 伊場野芋(大崎市)や温海カブ(鶴岡市)…。在来作物はまさに地域を売り込むブランドである。希少性があるが故に、プレミアム価格で売れる点も、農業振興に果たす役割は大きい。
 在来作物を活用した加工品づくりも、6次産業化のシーズ(種)になる。
 例えば、20年ほど前にいったん栽培が途絶え、その後復活した長井市の青豆在来作物「馬のかみしめ」。豆の表面に馬の歯形のような模様があることからその名が付いた地域特産の作物はジェラートや菓子の素材としても使われ、好評を博している。強い香りとコクの深さがその理由だ。
 産地でしか手に入らない、貴重な味を求めて、遠くから客もやって来る。在来作物を核とした観光も有望だ。観光のストーリー構築に、在来作物をどう生かすか、その知恵が求められる。
 在来の作物は何も野菜とは限らない。穀類もあれば、家畜もある。地域の資源として在来作物を再発掘し、生かしていく努力が求められる。
 課題は知名度が不足していることから、魅力が十分に伝わっていないばかりか、存在そのものさえ知られていないものが多いことだ。まずは、在来作物に関する情報発信を強化したい。