一つの認証制度ばかりに目を奪われすぎていないだろうか。クローズアップされるあまり、「万能だ」と誤解や錯覚が広がってはいないか。
 農産物の生産工程に関する認証制度「GAP(ギャップ)」のことだ。2020年東京五輪・パラリンピックの選手村で提供するコメや野菜などの食材について、東京五輪組織委員会がGAP取得を調達の条件にしたことで、一気に注目されるようになった。
 国や自治体も懸命だ。福島県は東京電力福島第1原発事故の風評払拭(ふっしょく)につながると期待。国際規格のグローバルなど第三者認証GAPで計141件、独自の県GAPで220件の取得を20年度までの目標に掲げた。
 取得費用を全額助成する制度創設の効果もあり、県内の取得件数は本年度末で累計65件となる見込み。年度当初の10件から飛躍的に増える。
 GAP取得の意義は確かに大きい。生産工程ごとに計画を立てて実施し、点検することは農産物の安全性確保につながる。廃棄物のリサイクルといった環境に優しい取り組みも必要だ。国際規格を取得すれば輸出の好機が広がる。
 ただ、取得さえすれば選手村で世界のトップアスリートの口に入り、産地の知名度が一気に高まるかといえば、そうとは言い切れない。
 「オーガニック(有機栽培)かどうかを気にする海外のアスリートは少なくない」「選手村で海外勢が手にするのはオーガニックの輸入食材という可能性がある」。こう指摘する流通関係者もいる。
 農薬や化学肥料を使わない有機栽培は、GAPに負けず劣らず環境負荷が小さい。五輪が重視してきた「持続可能性」に合致する。日本の認証制度「有機JAS」は欧米などの制度と同等と認められており、取得した農産物は有機食品として輸出できる。
 「わざわざGAPを取得する必要はない」。こうした考えを持つ有機JAS取得者もいると聞く。東京五輪を有機栽培普及の契機にもつなげる工夫が必要ではないか。
 有機農産物は食材調達で推奨項目にとどまっているが、有機JAS認定時にGAPの一部基準を満たしていることを確認できれば、五輪食材の調達基準に達しているとみなすといった柔軟な発想があっていい。
 GAP取得や有機栽培の推進に当たり、選手村への食材提供以外にターゲットを広げる視点も大切だ。
 そもそも、スポンサーではない生産者は選手村への食材提供を宣伝できず、産地だと対外的にアピールできない。ホストタウンの事業や事前キャンプなど制約のない機会を積極的に生かしたらどうか。
 東京五輪まで猶予はそれほどないが、ホストタウンとなった都市などを中心に食材提供の在り方を見詰め直してほしい。持続可能な農業を目指す機運を高めていきたい。