東北の産学官が誘致を目指す二つの加速器関連プロジェクトが今年、実現に向け正念場を迎える。
 仙台市に整備計画がある「次世代型放射光施設」は、リング型の加速器を光速で回る電子が方向を曲げた際に発生する光でナノレベルの物質解析ができる。文部科学省の審議会が近く新設の必要性を提言する見通しで、整備へ動きだす公算が大きい。
 もう一つは岩手、宮城両県境にまたがる北上山地が候補地の超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」。地下に設けた直線加速器で電子と陽電子を衝突させてビッグバン直後を再現し、宇宙誕生の謎に迫る。建設の可否を巡る政府の決断が焦点だ。
 実現すれば東日本大震災からの復興の象徴となり、東北の将来像にも直結する。誘致を目指す産学官組織は建設の意義をさらに発信すべきだ。
 政府は地方創生の観点からも実現へのリーダーシップを早期に示してほしい。
 放射光施設は東北大や東北経済連合会でつくる光科学イノベーションセンターが中心となり、東北大青葉山新キャンパス(仙台市青葉区)への誘致を進める。建設費は約300億円で2020年の運用開始を目指す。
 文科省科学技術・学術審議会の小委員会は、18日にも早期整備を求める最終報告を示す見通しだ。これを受けて文科省は整備方針を固めるとみられる。18年度政府予算案には初めて推進費2億3400万円が盛り込まれた。
 新素材、電子部品、創薬など研究範囲は幅広い。センターは官民共同の施設整備に向け、既に大手企業50社近くから1口5000万円の出資を取り付けた。東北のみならず国内産業のけん引役となることが期待されている。
 ILCを巡っては昨年11月、研究者組織の国際将来加速器委員会が加速器の全長を31キロから20キロに短縮し建設費を8300億円から5000億円に削減する新計画案を決めた。各国政府に出資を求める上で懸案だった費用削減に見通しが立ったのだ。
 研究者らは日本と欧州各国の協議開始を求める。欧州では20年に次期素粒子物理学戦略が始まる。そこにILCへの協力を盛り込んでもらうには、今夏の議論開始がタイムリミットとみているからだ。
 外国人研究者らの受け入れ態勢の整備も不可欠だ。東北ILC推進協議会は3月、北上山地周辺のまちづくりマスタープランを策定する。住宅、教育、医療など生活環境の方向を示す。岩手、宮城両県議会は超党派の議員連盟をつくり、誘致に本腰を入れている。政府与党への働き掛けを一段と強めてほしい。
 放射光施設は次世代ものづくりをリードし、ILCは宇宙の起源解明の扉を開く。その拠点が復興途上の東北に誕生する意義を広く伝えたい。オール東北の力が試される。