平昌(ピョンチャン)冬季五輪(2月9日開幕)が間近に迫った。韓国では1988年のソウル夏季大会以来、30年ぶりの五輪で、大会ムードが高まってきた。
 北朝鮮の参加が南北会談で合意され、差し迫った半島有事のリスクは遠のいた。そのことの意味は小さくない。
 しかし、17日までの南北協議では北朝鮮側が「五輪カード」を抜け目なく使い、対話の主導権を握ろうとする思惑が透けて見える。
 もとよりスポーツの政治利用は許されない。20日に予定される国際オリンピック委員会(IOC)、南北のオリンピック委員会、大会組織委員会による「4者会談」ではIOCが仕切り役を務め、公正な大会運営を先導すべきだ。
 国際社会は一致して北朝鮮による核・ミサイル開発を非難し、制裁圧力を強めている最中だ。国連総会で期間中の紛争を控える「五輪停戦」が決議されたが、その先の行方は不透明と言わざるを得ない。
 であればこそ参加各国はことさら北朝鮮を特別視することなく、五輪に集う国の一つとして接しフェアプレーの姿勢を冷静に貫くべきだろう。
 孤立するこの国をも招き入れた平昌大会は「連帯と多様性」という五輪精神を世界に発信することになるはずだ。
 2年後の東京五輪でも、日本は北朝鮮の参加問題に直面する可能性が高い。大会を無事成功に導くことができれば大きな試金石となろう。
 今大会で忘れてならないのは、IOCがロシアのドーピング問題で国家としての選手団の排除を決めたことだ。
 2014年ソチ冬季五輪で開催国ロシアが行っていた禁止薬物の乱用、尿検体のすり替えなど国ぐるみの不正行為は目に余る。厳しいペナルティーは当然だろう。国威発揚としてのドーピングは五輪の政治利用そのものだ。
 一方でIOCのバッハ会長はスポーツ大国・ロシアとプーチン政権への配慮が目立った。潔白が証明できる選手には個人資格での出場を認める救済策を用意するなどした。
 硬軟の策を取り混ぜバランスを図る政治的取引に他ならない。そんな姿勢でドーピング一掃はできるのだろうか。
 世界反ドーピング機構によると、違反者は122カ国・85競技(15年)に及んでいる。ロシアの処分だけでは済まないはずだ。日本のカヌー選手が同僚の飲料に薬物を混入し、陥れようとした事実も明らかになった。よそごとではなくなっている。
 IOCは一切の不正や政治的関与を排除する決然とした姿勢を大会前に示すべきだろう。五輪がイベント化しスポーツの経済価値が高まるほどリスクは増大しているように映る。新たな戦略を考える時期に来ているのではないか。
 世界の人々が見たいのは国同士の駆け引きでも偽りのパフォーマンスでもない。「平和の祭典」に集うフェアなアスリートらの躍動である。