第196通常国会がきのう召集され、安倍晋三首相が施政方針演説を行った。
 昨年10月の衆院選公約を踏まえた演説内容で、よく言えば手堅く、裏を返せば総花的で新味に乏しかった。
 あえて安倍カラーを抑えた感がある。今年秋の自民党総裁選をにらみ、冒険を避けて「安全運転」に徹したのか。
 象徴的なのは宿願の憲法改正についてだ。「各党が具体的な案を国会に持ち寄り、憲法審査会において、議論を深め、前に進めることを期待する」と述べるにとどめた。
 野党の反発を懸念したのだろうが、2020年の改正憲法施行という意欲を封印、9条への自衛隊明記など具体的なテーマにも触れなかった。
 国民の間で改憲の機運は高まっていない。それでも強く望むのなら各党に独自案提出を促すのではなく、まず自らの言葉でその必要性を説くべきだったのではないか。
 内政では、これまで書き換えてきたスローガンが羅列された印象が否めなかった。
 今国会の目玉に据える「働き方改革」を手始めに、「人づくり革命」「生産性革命」「地方創生」について個別の取り組みを順に説明した。
 「国難」と位置付けた少子高齢化対策については、19年10月の消費税率引き上げに伴う増収分を使い、「全世代型」の社会保障に転換していく決意を改めて示した。
 高齢者の保障に偏る現行制度を子育て世代にも手厚くするのが狙いだ。介護人材の確保、待機児童の解消、教育の無償化などを掲げた。
 しかし、国の借金返済に回すはずだった消費税増収分を財源にするわけだから、そのままでは財政再建の道筋が遠のきかねない。とりわけ、20年度に基礎的財政収支を黒字化する財政健全化目標が先送りされたのは懸念材料だ。
 達成時期などについて「夏までに示す」と語ったが、これでは痛みを伴う改革から逃げていると言わざるを得ない。「ばらまき先行」と批判されても仕方がないだろう。
 東日本大震災からの復興策については、福島イノベーション・コースト構想に触れただけ。「生業(なりわい)の復興」「心の復興」という抽象的な言葉が躍った。安倍政権でも風化が進んでいるのではないか。
 外交・安全保障では核・ミサイル開発を進める北朝鮮に毅然(きぜん)と対処するため、防衛力の強化を宣言。年末に向けて防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」見直しに言及した。
 陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」や長距離巡航ミサイルの導入を既に決めており、「専守防衛」との整合性と同時に、軍拡競争の危惧が拭えない。
 安倍首相が150年前の明治維新になぞらえた「新たな国創り」には憲法に関わったり、これから肉付けが求められたりする政策課題が少なくない。国民の合意を得るための国会での熟議が不可欠だ。