連合の神津里季生会長と経団連の榊原定征会長によるトップ会談がきのう、都内であり、2018年春闘が本番を迎えた。今年こそ、景気回復の実感を地方にも中小企業にも広げる端緒としたい。
 というのは、安倍晋三首相が、実現すれば四半世紀ぶりとなる3%の賃上げを要請。このことを経団連は「社会的要請」と捉えて企業に積極対応を促しており、5年目となる「官製春闘」で、かつてないほど賃上げの機運が高まっているからだ。
 連合は、基本給を底上げするベースアップ(ベア)2%改善と、定期昇給分を合わせ4%の賃上げを要求する。
 企業は、将来にわたり人件費上昇につながるベアには二の足を踏み、ボーナスや手当で対応しようとする構えだ。となれば、暮らしの底上げには力不足を否めまい。
 世界的な景気拡大や円安などから、企業業績は好調が続き過去最高益を更新する勢いだ。しかも、各種の調査では今年の景気について上向きとの見通しが多数を占める。
 地域や業種によって事情は異なるにしても、明るい材料が目立つ今春闘は、より踏み込んだ対応を望みたい。「経営者自らが積極経営のギアをさらに上げていく」。経団連の春闘指針が示す、この決意を実行に移してもらいたい。
 むろん、その姿勢は大企業にとどまらない。確かに地方の中小を中心に、人手不足が深刻化している。働き手確保のため賃金で大手と張り合おうとすれば、経営体力の低下は避けられない。3%の旗を振る政府の支援が不可欠だ。十分に目配りしてほしい。
 賃上げは、個人消費を活発化させることで、企業自らの業績を伸ばし、さらなる賃上げにつなげる。一方で、待遇改善を通して人材を確保し、生産性の向上につながる従業員の意欲を高める。そんな役割も果たす。
 利益をため込むばかりでは企業は、社会で期待される役割を果たせず、自らの首をも絞めかねない。利益の適正な分配が、成長の原動力となることを忘れてはなるまい。
 関連法案が通常国会で審議される働き方改革は、今春闘のもう一つの焦点である。
 長時間労働是正に向けた残業時間の上限規制導入や、正規と非正規従業員の待遇格差を縮める「同一労働同一賃金」について、関連法の施行前でも、前倒しで対応するべく各社労使で話し合いたい。
 従来の労働慣行を抜本的に改めることになるだけに、いかに見直し定着を図るかは大きな課題だ。残業代が減った場合にどう賃金を補うのか、非正規との格差縮小に関し正規社員が割を食うことはないのか、といったように労使で詰めるべき論点は多い。
 政府の介入を受けつつも、労使がどう現場力を発揮し、働く環境の改善につなげていくか。今春闘を労使関係再構築の一歩にもしたい。