政府が新たな財政健全化計画を策定する基礎となる財政試算が公表された。
 正直言って、本当に財政を立て直せるのかと懸念が先立つ。だが、借金と共に膨らむ将来不安が拭われなければ展望は開けまい。今度こそ、国内外の信頼に足る実現可能な計画をつくらねばならない。
 試算は二つのケースで行われた。国内総生産(GDP)が名目で3%台半ば、実質で2%という「成長実現ケース」と、名目も実質も1%台のいわば「低成長ケース」だ。
 いずれも歳出削減策がない前提で、前者の場合、国と地方の基礎的財政収支の黒字化は、従来の2025年度から27年度へと2年遅れる。後者では27年度になっても、なお8.5兆円の赤字が残る。
 どちらにしても、財政の悪化は一段と加速する。安倍晋三首相が19年10月予定の消費税増税分約1.7兆円を、財政の穴埋めから教育無償化へ使途変更すると決めたのだから、当然のことではある。
 基礎的財政収支は政策経費を借金以外の主に税収でどれだけ賄えているかを示す。黒字化で新たに借金はせずに済むものの、借金そのものは減らない。黒字達成は入り口にすぎず、試算はそこに到達するのさえ難しい現状を映す。
 だが、黒字化目標は歴代内閣が何度も先送りしてきた経緯があり、安倍政権に至っては消費税率引き上げを2度延期した上に、20年度達成目標をまたもや先延ばしにしたことで、日本財政に対する信認は揺らいでいる。もう、これ以上の先送りは許されない。
 6月までの策定を目指す新たな健全化計画では、成長実現ケースで27年度とされる黒字達成時期を、どこまで早められるかが焦点といわれる。
 だが、このケースでの成長率は近年にない高さであり、現実味を欠く。楽観的な見通しに基づく計画は、従来と同様の轍(てつ)を踏みかねない。取り組みは格段に厳しくなるとしても、現実的な低成長ケースをベースにして健全化の道筋を検討するべきではないか。
 なぜなら、必要なのは地に足の着いた堅実な取り組みだからだ。実現可能な黒字化達成時期と、その裏付けとなる具体的な計画が求められる。
 安倍政権が唱える「経済再生なくして財政健全化なし」は成長に伴う税収増を頼みとした財政再建路線だ。が、成長は海外経済や為替に左右される不安定さがあり、現に再建が遅々として進まないのはその頼りなさの証しである。
 確実な財政健全化には、特に増え続ける歳出の抑制と削減が欠かせない。団塊の世代が全て75歳以上となり、医療・介護といった社会保障費がぐんと膨らむ25年をにらみながら、歳出・歳入改革にも取り組まねばならない。
 八方美人の「大盤振る舞い」とは真逆の「痛み」を伴う改革である。「財政再建の旗は降ろさない」と言い張る首相の覚悟が問われている。