配偶者が専業主婦やパートで働く世帯の所得税を軽減する配偶者控除制度が1月から変わった。そもそも制度の見直しは、女性の就労機会拡充や若い世代に光を当てる税制を目指していたが、当初の理念にはほど遠いままだ。
 満額の38万円控除を受けられる配偶者(多くは妻)の年収上限が103万円以下から150万円に拡大される。上限を超えると徐々に減る特別控除は、従来141万円以上だった「ゼロ」ラインが201万円超に上がる。控除額は世帯主(多くは夫)の年収によって3段階になる。
 いわゆる「103万円の壁」を取り払い、働く意欲がありながら、上限を超えないように仕事をセーブする就業調整をなくそうというものだが、その効果は疑問だ。
 女性の就労人口は増えている。しかし、役員を除く女性雇用者の4割超はパート・アルバイト。厚生労働省の2016年調査ではパートタイムで働く女性の23.6%は配偶者があり、その92.4%は主に夫の収入で生活している。
 22.8%が就業調整をしており、その44.8%が配偶者控除を理由に挙げた。自身の所得税非課税枠や、健康保険などの被扶養者枠も半数が理由にしている。
 新たな「150万円の壁」はもちろん、社会保険加入、夫の勤務先の家族手当支給要件と壁はなお多い。どうすれば家計にとって損をしない働き方になるかにきゅうきゅうとしながら、年収ラインに合わせた就業調整が続くだろう。
 政府の試算によれば、時給1000円で1日6時間、週5日働く人の給与年収が144万円程度なのだという。勤務を増やしたとすれば、パートの身分のまま、ますます正規社員と変わらない働き方になっていく。これで就労意欲が高まるはずがない。
 一方で、女性は正規職員でも半数が年収300万円未満。夫婦とも年収が200万円台という共働き世帯に、配偶者控除の恩恵は及ばない。
 配偶者控除は、高度成長期の1961年に、夫はモーレツ社員として働き、専業主婦の妻が子育てや家事を担うという性別分業の家庭像を前提につくられた。共働きが専業主婦世帯を上回り、単身世帯も増えた今の日本社会にそぐわないのは明らかだ。
 当初は女性活躍推進や働き方改革というお題目で、実のところは労働力の拡充を目的に、廃止も視野に制度の見直しに着手したはずだった。
 女性が働こうとすれば育児や家事の負担が増し、そのためのサービスを受ければお金が掛かり、稼ぎは目減りする。働かない方が得と思わせるようなゆがんだ制度は撤廃するべきである。
 小手先の控除で減税をアピールするより、税収分で社会保障を整えていくことが国民にとっての利益ではないか。中途半端な見直しのまま壁を温存することは許されない。