生活に困窮する高齢者らが身を寄せ合って暮らす札幌市の自立支援住宅「そしあるハイム」で火災があり、男女11人が犠牲になった。
 全入居者16人のうち13人が生活保護を受けていた。体が不自由で食事や入浴などに介護が必要な人もいたという。
 社会的弱者の不遇の死はやりきれない。被害を抑える手だてはなかったのだろうか。
 火災は1月31日深夜に発生。旅館を改築した木造一部3階の住宅はたちまち炎に包まれ、全焼した。入居者の個室は1、2階に計16室あり、各部屋に石油ファンヒーターが設置されていたという。
 出火原因などは分かっていないが、低所得者向け施設の防火対策の難しさが、共通課題として改めて浮き彫りになった格好だ。
 住宅の運営会社は入居者に1人当たり月3万6千円の割安料金で部屋を提供していた。昼は職員が常駐。夜間は不在になる管理体制だった。
 住宅にはスプリンクラーの設置義務はなかったが、札幌消防局が2014年に査察した際、消防用設備の点検報告をしていなかった。16年12月の検査で法令違反がないことを確認したという。
 法的に問題がないにせよ、「災害弱者」とも言える人たちの生活空間である。自力避難が容易でないことは明らかだ。運営者側には、万が一を見越した管理責任が課されていると認識すべきだった。
 こうした低所得者向けの老朽施設やアパートの多くは、狭い部屋が何室も連なる混み合った構造になっている。いったん火災が起こると火の回りが早く、被害が拡大しやすいとされている。
 昨年8月、横手市で生活保護を受けながら社会復帰を目指す精神障害者らが暮らすアパートが全焼。入居者5人が死亡した。当時1、2階の全28室中、25室が埋まっていた。年4回避難訓練を行っていたというが、非常時の対応は難しかったとみられる。
 横手の場合は、地域で弱者の自立を支える「受け皿」不足の現実が、火災によってあらわになったケースだった。
 決して防火体制が十分でない建物で、孤立した形で生活していた点では「そしあるハイム」も同様だ。
 防火設備を設置したり、夜間の警備に費用をかけたりすれば家賃に跳ね返る。生活保護受給者の入居がかえって難しくなるという。
 政府は、生活保護費のうち食費や光熱費に充てる「生活扶助」の支給額を新年度、最大5%引き下げる方針だ。単身高齢者は最大月約4千円減となる。
 自立支援を促すと言いながら、生活保護切り下げが先行されるのでは受給者の行き場は限られていく。
 これ以上、生活困窮者らの悲劇を生まないためにも、国は施設への補助や、地域社会でのケア充実など具体的な対策を進めるべきだ。