やってみれば意外に簡単なことでも、本気で取り組もうとはしない。「縦割り」の組織が絡むとなおさら、住民ニーズは顧みられることなく、部署と部署の隙間に押しやられてしまう。「お役所仕事」によくある話ではある。
 除雪車の通過に伴い、玄関先や門口にうずたかく押し付けられる雪は、そうした役所の目からは見えにくい地域課題の典型と言える。
 残された雪の山は、車に踏まれた圧雪が削り取られたものが多く、得てして硬く締まっていて、重い。かき分けて道路に出るのも一苦労。高齢者にとっては、体にこたえる厄介者となる。
 市町村では通常、道路の除雪は建設課などが、高齢者の生活上の困りごとは福祉課などが、それぞれ受け持つことになっているのだろう。しかし、うまく連携が取れているという話はあまり聞かない。そこで雪の多い東北の自治体には新庄、寒河江両市のケースをぜひ参考にしてほしい。
 両市は今冬、除雪車にスマートフォンを配備し、衛星利用測位システム(GPS)機能で効率的に運行を管理するシステムを導入。これに合わせて道路の雪を高齢者や障害者の家の前に押し付けない「思いやり除雪」を始めた。
 東北他県では、除雪車が残していった雪の片付けをシルバー人材センターなどに依頼した場合、高齢者のみの世帯などを対象に費用の一部を補助する自治体もあるが、そもそも雪を押し付けないようにする試みは珍しい。
 発案したのは市の道路課でも福祉課でもなく、運行管理システムを開発、販売した南陽市のソフトウエア会社だ。
 運行管理システムにあらかじめ登録した場所へ接近すると、アラームやメッセージが作動する機能を追加。除雪車が高齢者や障害者の家に近づくと、アラームなどでオペレーターに知らせて、雪を押し付けない操作を促す仕組みを作った。
 事前に登録した「除雪弱者」は、寒河江市は要介護3以上の独居高齢者約80世帯、新庄市は独居高齢者や身体障害者の計約20世帯。寒河江市は市社会福祉協議会から、新庄市は市福祉事務所からそれぞれ情報提供を受けたという。
 個人情報保護のため、除雪作業の受託業者に提供されるのは「場所の特定に必要な最低限の情報に限定」(新庄市都市整備課)されているという。
 寒河江市によると、市内で1人暮らしをしている65歳以上の人は796人、要介護3以上の高齢者は1028人。ともに過去5年間で約4割も増加している。東北のほとんどの市町村は、ほぼ同じような傾向にあるはずだ。
 雪国の苦労を軽減していく努力は、高齢化が進む地域では重要な福祉政策であり、人口減少対策にもなり得る。豪雪に立ち向かう自治体の知恵が問われている。