国による生産調整(減反)が今年限りで廃止されるのに伴い、山形県が取り組んできた食味重視のコメ作りがどんな成果を上げるのか、注目を集めている。
 当面は日本穀物検定協会(穀検)の食味ランキングで、全ての県産米が最高評価「特A」を獲得できるかどうかが試金石となるが、結果に一喜一憂するのは賢明でない。
 過度にランキングに依存したブランド戦略は、県が生産現場に課してきた品質確保の努力を消費者の目から見えにくくする恐れがあるからだ。
 県の取り組みは昨年2月、2016年産米の食味ランキングで、主力品種「はえぬき」が22年間維持してきた「特A」から転落し、5段階評価で一つ下の「A」となったことがきっかけ。参考品種として出品された18年発売の新品種「雪若丸」も「A」にとどまり、関係者の間で危機感が一気に強まった。
 県は本年度、農協などとともに「県産米特A獲得プロジェクト」を設立。「はえぬき」については、技術力の高い生産者を選抜して「特A栽培モデル圃場(ほじょう)」を設定し、地域特性に応じた栽培技術の普及に努めてきた。
 「雪若丸」は一つの穂に付くもみ数が少ない品種特性をカバーするため、茎数を増やす手法などをマニュアル化し生産者の研修を重ねてきた。
 目標とする「特A」獲得は確かに分かりやすい宣伝材料になるだろうが、こうした関係者一丸となった取り組みを消費者に詳しく伝えていくことが、むしろ長期的に産地としての評価を高めることにつながるのではないだろうか。
 もちろん穀検は権威ある第三者機関で、その発信力は軽視できないが、人の味覚に基づく評価にそもそも「絶対」はあり得ない。
 ランキングを決める食味試験は、20人の評価員が複数産地のコシヒカリブレンド米を基準に外観、香り、粘り、味、硬さ、総合評価の6項目で比較する方式。基準米に比べ「特に良好」は特A、「良好」がA、以下「おおむね同等」A’、「やや劣る」B、「劣る」B’と格付けされる。
 この数年、B以下にランク付けされるコメはなく、産地や品種を問わず、全体としておいしくなっているのは間違いない。突出して美味なコメを作り出すのは、既に困難な時代になったと言っていい。
 山形県の「つや姫」が、魚沼産コシヒカリ(新潟県)に迫る高級ブランド米に成長した背景には、水田の適性や栽培技術などを審査した上で作付けを認める生産者の登録制がある。県が希少性と品質を保証することで、流通・消費の現場に信頼を獲得した例と言える。「はえぬき」「雪若丸」にも、食味向上に向けた官民の工夫は凝縮している。
 関係者の息の長い努力が一つの物語として消費者に伝わることで、山形米の味わいは一層引き立つに違いない。