果たして十分に議論したと言い切れるだろうか。検討方法は正しかったのかどうか。もう一度、見つめ直すことが重要ではないか。
 東京電力福島第1原発事故に伴う福島県産米の放射性物質濃度検査を巡る問題だ。
 県は早ければ2020年産から、全量全袋を対象にした現行方式を、旧避難区域などを除いて抽出方式に切り替える方針を提示。具体的な移行時期を年度内に決定する考えを明らかにした。
 全てのコメを検査する現行方式は、県産米の安全性を担保する一方、農家の大きな負担になっている。検査終了までに時間を要し、出荷の遅れによる取引への影響なども懸念されてきた。
 15年産以降は検査で国の基準(1キログラム当たり100ベクレル)を超えた例がない。見直しを判断する時期を迎えているのは確かで、見直しの方向性に異論を挟むつもりも全くない。
 ただし、方針決定に至る議論の進め方には、少なからず疑問が残る。
 県は昨年7月、生産者や消費者団体などが参加する検討会議を設置。見直し方針を示した今年1月まで計3回、会議を開催した。
 だが、公開したのは冒頭など一部のみ。話し合いの詳細はオープンにならなかった。
 「諮問機関ではなく、あくまで意見を聞く場」。非公開とした理由を、県はこう説明するが、その判断が妥当だったとは思えない。
 県が方針を提示後、検討会議の参加団体が異論を唱えたことが何よりの証しだ。
 県内の農協グループは年度内の移行時期決定は「拙速だ」との趣旨で反発。県が「(見直しについて)検討会議で異論はなかった」と公表したことも強く批判した。
 非公開の議論は、福島県が抱える課題を広く共有し、解決につなげていく機会を奪ったようにも思える。
 県などが昨年秋に実施したインターネットによる消費者アンケートでは、検査継続を求める意見は県内で50%、関東でも32%に上った。
 検査による安心感を重視する消費者の考えの根っこには何があるのか。「風評」の本質に迫る議論があったのかどうか。非公開ではさっぱり分からない。
 全袋検査に伴う負担など、農家の苦労や努力が十分に理解されていないのだとしたら、検討会議の場を通じ、現実を伝えるべきだったのではないか。公開で生産者から話を聞いたり、現地調査をするなどの工夫ができたはずだ。
 まだまだ遅くない。仮に20年産から見直すことになるにせよ、それまでに、何をしていくかが重要だ。
 コメの検査見直しを「風評」を問い直す機会にできないか。なぜ風評は完全に拭えないのか、克服にはどんな取り組みが必要か。県民ぐるみで考える場を設けてほしい。もちろん、公開を大前提に。