現金を支払って大学生らを動員していたことが発覚した高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分を巡る意見交換会が、この春から全国で本格的に再開されるという。
 国や電力業界が深く関わる「原子力発電環境整備機構」(NUMO)の事業で、でたらめな運営が行われたことは重大な問題だ。東京電力の社員が参加したことも明らかになっている。
 原子力を巡る説明会やシンポジウムではこれまで何度も、電力各社の組織的動員や「やらせ」で意見を表明させていたことが批判された。背景にあるのは、極めて閉鎖的な「原子力ムラ」の力で政策や事業を押し通そうという思惑だったのではないか。
 東電福島第1原発事故によって原子力ムラからの決別を強く求められたのにもかかわらず、あしき体質に染まっていたのでは国民の信頼は到底得られない。
 機構は運営方法を手直しして今後も全国各地で開いていく考えのようだが、根本的な問題が解決したとは思えず、安易すぎると言わざるを得ない。
 不適切な動員が発覚したのは昨年11月。さいたま市で開いた意見交換会で、1人につき1万円を約束して学生12人を参加させていた。その後の調査で、2014年以降の意見交換会やセミナーで、少なくとも計79人を動員していた疑いがあるという。
 機構は当初、謝礼や日当は約束しただけで実際は払っていないと説明したが、2人の学生に5千円ずつ出していたことが明らかになった。
 さらに、機構の職員は東電側に「意見交換会の周知や出席」を求めるメールを送り、6回の意見交換会で計81人の東電社員が参加した。東電はグループ会社や協力会社にも参加を要請していた。
 謝礼を約束して動員したのは広報を委託されたマーケティング企画会社だったが、機構も自ら電力会社に働き掛けたのだから責任は重い。
 要請に応じてしまう東電にも驚かされる。電力業界で以前も動員や「やらせ」があったことは分かっているはず。何より原発事故の当事者として、賠償や廃炉に全力を尽くさなければならない立場であることを自覚すれば、応じないのが常識ではないか。
 再開に当たって、機構は企業に委託せず「直営」で実施するというが、表面的な解決策にしか映らない。本気で国民の理解を得たいと思うなら、国が直接行う方式に改めるべきだ。
 運営もいくつかの選択肢と判断材料を提示して、多くの人に議論してもらうような手法でないと意味がない。核のごみの処分は、核燃料サイクル政策などと密接に絡む。
 一つの道筋だけを示して理解を求めるようなやり方はそもそもおかしく、原子力政策をゆがめてきたことを思い起こすべきだ。