真相の解明とは、程遠い期待外れの内容だった。国民の不信や疑念は一段と深まったのではないか。
 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却に関する決裁文書改ざんを巡り、当時財務省理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問がきのう国会で行われた。
 改ざん発覚後、「最終責任者になる可能性が大きい」「関与の度合いが高い」などと麻生太郎副総理兼財務相ら身内の関係者から指摘されていたキーパーソンである。
 しかし、佐川氏は焦点とされる改ざんの理由や経緯について、「刑事訴追の恐れがあり、答弁を差し控えたい」と何十回も繰り返し、証言を拒み続けた。
 真相究明に背を向けて、保身を図るような態度は国民を愚弄(ぐろう)していると言わざるを得ない。元官僚の矜持(きょうじ)はいったいどこへいったのか。
 改ざんの実行に関しては「官邸に報告することなく、財務省理財局の中で行った」と言い通した。安倍晋三首相、妻の昭恵氏、菅義偉官房長官、麻生財務相らからの指示の有無を問われると、真っ向から否定した。
 自らの関与や経過については一切口を閉ざしながら、なぜ他の関係者については関わりがないとまで明言できるのか。傷口を最低限に抑えたい政権側の意に沿った言葉に聞こえる。シナリオ通りの証言ではなかったか。
 佐川氏は森友問題に火が付き、改ざんが行われたとされる昨年2~4月当時、答弁を一手に担った。「その時の局内は騒然としていた」「答弁で丁寧さを欠いていた」と、率直に反省の意を示した場面もあった。
 実際、改ざんが明らかになって、森友側との事前の価格交渉や政治家などの働き掛けで、虚偽が疑われる答弁をしていたことが分かっている。
 仮にそうであったとしても事実との齟齬(そご)があればその都度、訂正すれば済むことだ。答弁との矛盾を正しい文書の改ざんで糊塗(こと)することは官僚の発想とは懸け離れている。
 昭恵氏の名前がある改ざん前の文書を見ているかを問われ、それすら「言えない」と突き放した。佐川氏が隠蔽(いんぺい)しているものは何なのか。
 学園が開校を予定していた小学校の名誉校長を昭恵氏が一時務めていたことに、首相は「学園の信頼性を高める」と国会答弁で夫人の影響力を認める発言をしている。財務省側の忖度(そんたく)が働いたとの疑問は消えない。
 「私や妻が関係していたら辞める」という首相答弁についても佐川氏は影響を否定したが、その根拠を明確に示してはいない。
 佐川氏が核心を語らない以上、昭恵氏はもちろん野党側が要求している政府関係者の国会招致は不可避ではないか。求められるのは国民が納得できる説明だ。こんな茶番劇で幕引きは許されない。