今国会に「生活困窮者の自立促進」(厚生労働省)に向けた法改正案が提出され、「無料低額宿泊所」の規制などが盛り込まれた。
 「貧困ビジネス」が社会問題化する中、悪質事業者の締め出しや、困窮者向け支援住宅などの安全性向上が期待される半面、ぎりぎりの環境で住まいを提供している事業者も影響を受けかねない。
 真の意味での自立促進は道半ばと言っていいだろう。
 「無料低額宿泊所」は、通常の賃貸住宅への入居が難しい生活保護受給者らの受け皿として、各地に設置されている。2015年6月の同省調査によると、自治体に届けられた宿泊所は全国で計約530カ所。東北では宮城県内に25カ所、山形県に1カ所それぞれあった。
 中には生活保護者を集めて、劣悪な環境で収容。生活保護費の多くを搾取する「貧困ビジネス」の温床となっている施設もあった。
 現行では事業開始後1カ月以内に、自治体に届け出ることになっているが、開始後では利用者がいる状況となり、悪質な場合も行政処分をしにくかったという。
 また、消火設備や部屋の広さなどの基準はあるものの、ガイドラインにとどまり、法的な強制力はなかった。
 社会福祉法などの改正により、事業者の届け出を事前制にし、施設の最低基準を定める。
 生活保護法も改正される。日常生活上の支援を必要とする受給者が、一定基準以上の宿泊所に入居し、事業者から支援を受ける場合、行政が委託費を支払う仕組みも創設される。
 ただ、全てが法律で規制できるわけではない。無料低額宿泊所は、無届けの施設が届け出分を大きく上回るとみられている。本来であれば、「宿泊所」という名称の通り、一時的な施設のはずなのに、改正によって一定基準以上については恒久化を追認しているようにも映る。
 1月に札幌で11人が死亡した自立支援住宅「そしあるハウス」は、宿泊所としても、一定以上の要件を満たす必要がある有料老人ホームとしても、届け出はなかった。
 昨年8月、横手市で生活保護を受けながら社会復帰を目指す精神障害者らが暮らすアパートが全焼し、入居者5人が死亡したケースも同様だ。
 今回の法改正案では、生活困窮者に向けた行政に支援体制の強化なども盛り込まれている。ただ、規制強化で予算や人員が必要になるのでは、ぎりぎりで運営している施設や法人にとってのハードルは上がってしまう。
 制度の隙間に潜っていくような施設が増え、事業者や居住者が公的な支援から遠ざかるようなことがあれば、本末転倒だ。
 実情に合わせ、さらに抜本的に制度を見直すことが必要ではないか。