東日本大震災は発生から既に7年が経過しているのである。暮らしの再建が進めば当然起こり得る事態だった。
 被災世帯向けに県や市町村が整備した災害公営住宅で、収入超過世帯に対する家賃の割り増しが問題になっている。対象世帯は今のところ数百世帯にとどまるが、なりわいの再生とともに今後急増するのは確実だ。
 基準月収が15万8千円を超える世帯は公営住宅に入居できない。基準月収を超えた世帯には住宅明け渡しの努力義務が生じ、入居4年目から家賃が引き上げられる。公営住宅法は、そう定める。
 しかし多くの人が住居を失った上、現地に災害危険区域の網が掛けられるなど住宅再建に多くの制約を課せられたのが、この震災だった。被災地は元々、民間の賃貸住宅が少ない地域でもあった。
 こうした事情を酌んで震災特例は、所得の多寡に関係なく災害公営住宅への入居を認めたはずだ。特別法で迎え入れるが、その後は一般法に従ってもらうというのでは竜頭蛇尾と言うほかない。
 公営住宅の家賃は、基準月収に立地条件や整備費用を加味して決められる。そのため、大規模に造成し、資材や人件費の高騰に目をつぶって整備を押し進めた災害公営住宅の場合は、どうしても割増額が過大になってしまう。
 被災自治体の試算では、標準的な3LDK(65~75平方メートル)の間取りで家賃が21万円超というケースもあった。災害公営住宅の家賃が生活再建の足かせになるのでは、まさに本末転倒だろう。
 早い時期に入居が始まった災害公営住宅では、4月から割り増し家賃が適用されている。この緊急事態に岩手県は、駆け込みで県営住宅の家賃に上限を設定。沿岸の市町村営住宅も県に追随した。福島県ではいわき市や相馬市が減免措置を講じている。
 こうなると気になるのは宮城県内の対応の遅れだ。
 石巻市や気仙沼市は、ようやく検討に着手したばかり。仙台市に至っては、災害公営住宅の住民が割り増し家賃を強要しないよう求めた署名簿を「対応の必要性なし」と一蹴した。
 「民間賃貸住宅に余裕があるから」とは、いかにも大都市仙台らしい説明だが、果たして被災世帯の生活や家計の実態を丁寧に調べた上での方針決定だったのだろうか。
 仙台市とは対照的に釜石市の野田武則市長は「もっと早く、この問題について検討し、方針を示すべきだった」と自責の念を吐露し「南海トラフ巨大地震に備え、反省点を生かさなければならない」と訴えた。教訓をはらんだ重要な指摘である。
 東日本大震災では発生の初期から延々、災害法制と現場のミスマッチが問題視され続けてきた。何のため、誰のための災害公営住宅なのか、改めて考えたい。