原発の再稼働などの事前了解について、対象を立地自治体以外の周辺自治体にも広げる全国初の枠組みができた。東京電力福島第1原発事故で、広範囲の多くの住民が避難生活を強いられたことを踏まえれば当然のことだろう。
 この方式を再稼働が予定される東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)にも導入することを求めたい。
 日本原子力発電は東海第2原発(茨城県東海村、停止中)の再稼働や運転延長を巡り、立地する東海村に加え、水戸市など周辺5市からも実質的に了解が必要とする安全協定を締結した。半径30キロ圏内に対象を拡大し、6市村と事前に協議し「了解を得る仕組みとする」と明記した。
 安全協定に法的拘束力はないが、協定に基づく事前同意は再稼働手続きの一環となっている。これで、対象自治体のいずれかが反対した場合、再稼働は難しくなった。
 「地元同意」に関して周辺自治体にも同意権を認める。これは、女川原発の再稼働について、原発30キロ圏内の緊急防護措置区域(UPZ)に含まれる自治体の一部が主張してきたことである。
 女川原発については、立地する女川町と石巻市が再稼働を左右する事前了解の権限を持つ。この2市町を除くUPZの5市町は2015年、東北電と安全協定を結び、宮城県を通じて意見を述べられる覚書を交わしている。
 しかし、村井嘉浩知事は「地元同意の範囲は国が示すべきだが、示さないなら女川町、石巻市と県で十分だ」との姿勢を崩さない。県は5市町と東北電との協定交渉で、事前了解の権限を盛り込むことに抵抗したという。
 立地自治体と同様にリスクを背負う周辺自治体が同意権を求めるのは、住民の安全を守る立場として当たり前のことだ。東北電と県は周辺市町の意向をくみ、もっと幅広く地元同意を得るよう、力を注ぐべきではないか。
 河北新報社が昨年8月、宮城県内の有権者を対象に実施した原発に関する世論調査では、女川原発の再稼働に必要な地元同意の範囲に関し「県と立地自治体」が適切とする回答は7.6%にすぎない。他の多くの県民は範囲拡大を望んでいた。
 福島第1原発事故後、原子力規制委員会の審査をクリアして再稼働した原発は7基ある。これらは全て、同意の対象は立地自治体と県に限られており、電力会社は協定で同意の権限を周辺自治体には認めてこなかった。
 事故を教訓として、国は12年、避難計画策定を義務づける範囲を30キロ圏に広げた。周辺自治体は義務を負うのに、再稼働への同意権は置き去りにされてきた。
 そもそも、地元同意の範囲を規定する法はない。国は責任を持って周辺自治体の同意権について法を整備するべきだろう。