国内総生産(GDP)で世界1、2位の経済大国が互いに一歩も引かぬ様相だ。
 米中両国の通商政策を巡る摩擦は「報復合戦」の段階に入った。不毛な対立は早急に収拾させるべきだ。
 米国は、知的財産権の侵害を理由に中国への制裁としてハイテク分野など1300品目に25%の追加関税を課す案を発表した。約500億ドル(約5兆3千億円)分が対象になる。
 これに対し中国もすかさず報復措置の方針を表明。米国からの輸入大豆、自動車など106品目に25%追加する関税は米制裁と同規模という。
 両国間では、米国が3月、鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を中国、日本など貿易相手国に発動。中国が米国産農産物128品目の報復関税を発動する「前哨戦」となり、既に切っ先を交わしている。
 この時の規模は約3200億円相当だったが、知財権問題の制裁規模は桁が違う。仮に双方が措置を発動し報復の応酬となれば、日本を含む世界経済に多大な影響が及ぶのは必至だ。
 本格的な貿易戦争に突入することだけは回避しなければならない。互いに譲歩し、正当な国際ルールに基づく対話で解決の道を探ってほしい。
 知的財産権保護の面で中国の法整備や取り締まりが遅れているのは間違いない。海外有名ブランド名の無断使用、進出企業に対し技術移転を強要する商慣行も目に余る。
 ただ、こうした不当性を自国の貿易赤字解消に直接結び付けるトランプ政権の浅慮も問題だ。軍事転用も可能なハイテク分野で台頭する中国をけん制する思惑があるにしても、日欧も含めた先進国が連携して取り組むべき課題ではないのか。
 トランプ氏の外交の特異さは、2国間によるディール(取引)と自国優先主義に尽きる。一連の貿易政策も今秋の中間選挙に向けたトランプ氏の点数稼ぎとの見方がもっぱらだ。そのために世界経済がかき回されてはかなわない。
 実際、日銀が2日に発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の景況判断が2年ぶりで悪化した。鉄鋼など素材業種を中心に、米政権の保護主義政策への警戒感が広がっている。
 日本の鉄鋼の対米輸出は全体の1割未満とはいえ、米市場から締め出されたら値崩れなどの影響は小さくない。
 3カ月後の先行き予測でも多くの企業が一段の悪化を見込んでいる。リスク要因が拡大し企業の経営姿勢が守りに入れば、内需を喚起する戦略は描けない。
 「米中の貿易戦争は誰にとっても良くない」と経済協力開発機構(OECD)が憂慮している。
 政府は今月中旬にある日米首脳会談などの場を通じ、多国間で協調し問題解決を目指す自由貿易ルールの重要性を強く訴えるべきだ。