新年度、多くの企業が新入社員を迎えた。ワークライフバランスも重視しながら就職先を決め、希望と不安を胸に入社した若者たちが、研修や歓迎会、あるいは配属された職場でハラスメントに遭遇し、早々に失望する事態は起きていないだろうか。
 2016年度、都道府県労働局が受理した相談の中で、職場の「いじめ・嫌がらせ」は最多の約7万1千件と増加の一途。「解雇」「退職勧奨」の中にもいじめに当たる事案が含まれ、実際はもっと多いとみられる。
 厚生労働省のパワーハラスメント実態調査(16年度)では「過去3年間に職場でパワハラを受けた」との回答は32.5%に上った。相談窓口設置など、パワハラ防止の取り組みをしている企業は52.2%だったが、パワハラを受けても「何もしなかった」従業員が40.9%で、対策が機能していない実態が浮かぶ。
 政府が働き方改革の一環として打ち出したパワハラ防止策強化を受け、厚労省の有識者検討会はセクハラなどと同様の法規制も視野に議論を進めてきた。結局は労使の意見が平行線をたどり、先月まとめた報告書は、防止措置を事業主に義務付ける案と、ガイドラインを示す案の両論併記となった。今後は労働政策審議会で議論される。
 「業務上の指導との線引きが難しい」というのが企業側の主張。しかし、加害側の意図とは関係なく、行為を受けた側が不快に思い、心身に害が及び、安心して働くことができない結果が生じればハラスメントだ。
 あるいは新人の通過儀礼的な悪習。酒席で飲酒を強要する、不必要にプライベートに踏み込む、「下ネタ」を話題にする。外見や性格をからかうなどの「いじり」は見過ごされがちだが、その場で笑っていても、実際は深く傷ついていることもあり得る。
 そのくらい我慢すればいいというのは二重のハラスメントにほかならない。企業にはコンプライアンス(法令順守)のためのおざなりの相談窓口ではなく、実効性ある対応が求められる。
 そもそも、職場のハラスメントをパワハラ、セクハラ、マタハラなどと細分化するのでなく、あらゆるハラスメントを、人格を侵害し、労働環境を損なう行為として包括的に規制し、被害救済までを含めた法整備が必要ではないか。当事者の性格や職場のコミュニケーション不足、一企業の社内風土などと片付けることなく、法的根拠に基づく措置を義務付けたい。
 終身雇用制が長く、古い価値観が定着している日本の職場文化は、変革を迫られている。企業がハラスメントを排除する毅然とした姿勢と具体的な措置を示すことが、職場の意識改革にも結びつく。対応できなければ、有為な人材が流出していくことを、企業は認識しなければならない。