米国のトランプ大統領が5月中の開催を目指している米朝首脳会談で、北朝鮮が朝鮮半島の非核化を協議する意向を直接、米国に伝えたことが明らかになった。
 北朝鮮が非核化の協議に応じる意向を明らかにしたのは今回が初めてで、北朝鮮の核問題が大きく動きだす可能性も出てきた。
 米朝間の水面下の交渉が前進しているとみられるが、これまでの歴史に照らしてみれば、こうした外交交渉が北朝鮮の核開発のための単なる時間稼ぎに利用される恐れはなお否定できない。
 非核化のプロセスを綿密に描きながら、周到に交渉を進めるべきだろう。
 日本としては、国際社会とともに従来の経済制裁を緩めることなく、この機会を捉えて日朝間の最大の懸案となってきた拉致問題の解決に何としても持ち込みたい。
 度重なる核実験や弾道ミサイルの発射実験で、北朝鮮はこれまで朝鮮半島の軍事的緊張を高めてきた。それが平昌五輪への選手団派遣をはじめとして短期間で一挙に融和姿勢へと転換した。
 南北関係では、首脳会談の開催を韓国の文在寅大統領と合意している。中朝関係では金正恩朝鮮労働党委員長が中国を電撃訪問し、習近平国家主席との初の会談で冷却化した関係を改善させた。
 最近のこうした外交姿勢の軟化は、軍事攻撃も辞さないという強硬姿勢を示し続けた米国の圧力と、国際社会の経済制裁の着実な成果であることは明らかだ。北朝鮮のさらなる譲歩を引き出しつつ、非核化までの実現可能な道筋を早急に描きたい。
 2003年から行われた6カ国協議では、非核化プロセスを段階的に行うとし、それに見合った支援を各段階で行うこととした。しかし、途中で交渉は決裂し、北朝鮮の核兵器の再開発を許し、結果的に支援をいわば持ち逃げされた失敗がある。
 受け入れ可能な要求をのみながら、非核化が頓挫しないようにするために、難しい交渉になることはどうしても避けられない。長期的に見れば、北朝鮮にとって、非核化こそが国益に最も資することを粘り強く説き続ける必要もあるだろう。
 来週、安倍晋三首相は米国を訪問し、トランプ大統領との会談に臨む。会談では、逆戻りすることなく、かつ検証可能な北朝鮮の非核化の道筋が話し合われる。トランプ氏との親密な信頼関係に立った上で、首相には拉致問題の解決を目指して全力を尽くしてもらいたい。
 北朝鮮にはほとんど手つかずの豊富な鉱物資源があるといわれる。どん底の経済の立て直しとともに、将来の資源開発のためには、日本の経済協力と技術供与が必要不可欠になるはずだ。拉致問題の解決こそがそうした協力を得る前提条件になる。