最初から最後まで「首相案件」だったのではないか。そう思わせる新たな文書の存在が明らかになった。
 学校法人「加計学園」が、国家戦略特区制度を活用して愛媛県今治市に岡山理科大獣医学部を新設した計画を巡り、中村時広知事はきのう記者会見し、文書が備忘録として存在していたと認めた。
 文書は2015年4月に県や今治市職員、学園幹部が官邸を訪れた際のやりとりで、当時の首相秘書官が「本件は首相案件」と述べたと記されている。国家戦略特区の活用を勧める発言もあった。
 同学園の学部新設が、官邸主導で進められた可能性が高まったといえる。
 学園の加計孝太郎理事長と数十年来の友人でもある安倍晋三首相は、学部新設について自らの指示や関与を一貫して否定してきた。「首相案件」だと言う秘書官の発言をどう説明するのか。
 学園と今治市は07年に構造改革特区での獣医学部の新設を申請し、その後も却下され続けた。流れが変わったのは安倍政権が推進する国家戦略特区に切り替えた15年からで、17年1月の特区諮問会議(議長・安倍首相)で申請が認められた。タイミングがあまりにも符合し過ぎている。
 「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」などと記された文書も昨年5月に見つかっている。官邸を軸にした「加計ありき」の特例シフトがあったことが強くうかがわれる。
 岩盤規制を打ち破るトップダウン型の国家戦略特区に政権の意向が反映されやすいのは致し方がない。それだけに、選考にあたっては公正さが求められるはずだった。
 しかし新設計画では、応募要件に「広域的に獣医学部が存在しない地域」「開学時期は18年4月」などの枠がはめられ、結果として加計学園しか応募できなかった。
 事業者選定に当たっては、「既存の大学で対応できない需要がある」など新設4条件を詳細に協議した形跡がなかった。大学設置・学校法人審議会による最終的な審査では当初8件の是正意見が指摘されたにもかかわらず甘い解釈で及第点を与え、認可するよう文部科学相に答申した。
 首相秘書官だった柳瀬唯夫経済産業審議官は「記憶の限りでは(愛媛県職員らと)会ったことはない」と面会そのものを否定している。国会の場での説明は不可欠だろう。
 開学早々、新キャンパスで学ぶ第1期生たちは戸惑っているはずだ。早く落ち着いた環境で学ばせたい。
 そのためにも、安倍首相は率先して疑念解消に努めなければならない。政策を無理強いし、官僚を圧迫していないか。不公正な行政手続きや、事実の隠蔽(いんぺい)はなかったか。公文書を巡る各省の不祥事を招き、政権と官僚とのいびつな関係をつくってしまった責任を受け止めねばなるまい。