東京電力福島第1原発事故から8年目。福島県産農産物を取り巻く状況はまだまだ好転したとは言い切れない。風評被害の払拭(ふっしょく)はもちろん、生産・販売戦略の練り直しが迫られているのでないか。
 農林水産省は3月末、2017年度の流通実態調査の結果を公表した。浮き彫りになったのは風評の根深さだ。
 野菜や果物など青果物について、首都圏の仲卸業者の3割が事故前より福島産の取り扱いを減らしていた。理由(複数回答)には「販売先から別産地を指定されている」(43%)「販売先が福島産以外を希望すると想定される」(39%)などが挙がった。
 取引価格も全国平均との差が解消されていない。コメは14年産の10.4%差から回復傾向にあるが、16年産は4.9%差。差が1%程度だった事故前に戻っていない。
 特産のモモはさらに厳しい。事故直後の11年度は42.8%差まで落ち込んだ。開きは一時、15.8%に縮まったものの、17年度は全国平均を23.3%下回り、価格差が再び拡大している。
 放射性物質濃度検査で安全性の確認を徹底していても、消費者アンケートで「安全性に不安がある」との回答が2割近いなど、福島産のイメージ回復が今も大きな課題であることは間違いない。
 だが、イメージ戦略だけで解決するのかどうか。今回の調査では首都圏の小売業者が聞き取りに対して「一度外した商品を棚に戻すことは難しい」などと明言している。
 そうだとすれば、県や農業団体などが県産品の販売フェアを開催してイメージアップを図ったところで、取り扱いはフェア期間に限られ、本当の販路回復にはつながっていないことになる。
 「業者が福島産に戻す理由やきっかけを見いだせていない」。農水省も指摘するように、安全性のPRといった従来の取り組みでは不十分。新たな付加価値を提案できるかどうかが問われている。
 どこに狙いを定めるか、販売先に関する検討も必要だ。コメについては福島産は中食や外食向けなど業務用米としての引き合いが強い。中食業者からは「(福島産を)大量に仕入れたいが、手に入りにくい」との声も上がっているという。産地や品種によっては業務用に活路を求めるのも一つの手法かもしれない。
 モモについては高価格の贈答用が他県産に取って代わられたままになっている。どうすれば巻き返せるのか、流通ルートから見直すなど知恵の絞りどころだろう。
 ここ数年、全国各地で新たなブランド米が誕生しているように、産地間競争が一段と激しくなっている。熾烈(しれつ)な棚の奪い合いという厳しい状況下で、県や農業団体、生産者が新たな福島産の価値を提案し、アピールできるかどうか。それこそが風評の払拭につながるのではないか。