自衛隊の活動範囲は「非戦闘地域」に限定され、憲法違反に当たらない-。そう説明してきた政府の見解が揺らぐ内容だ。自衛隊活動の徹底した検証が必要だろう。
 防衛省が公表した陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報のことである。
 2006年1月22日の日報には「戦闘が拡大、イラク警察及びイラク陸軍が治安回復のために介入」とある。「非戦闘地域」とされた陸自の宿営地サマワの情勢に関し、英軍と武装勢力の銃撃戦の様子が詳述されている。
 ほかにも「戦闘」の表現が見られ、政府が言う「非戦闘地域」と実態はかけ離れていると言わざるを得ない。
 小野寺五典防衛相は「自衛隊が活動した地域は、非戦闘地域の要件を満たしている」と主張する。政府は「戦闘行為」について「国または国に準ずる組織の間で生じる武力を用いた争い」として、計画性や組織性、継続性などから判断するとしている。
 従って日報にある状況は戦闘行為には当たらないとの解釈だが、どれだけの国民が納得できようか。
 しかも、今回公表された日報は435日分にとどまり、部隊の派遣期間(04年1月~06年9月)の45%と半数にも満たない。特に宿営地にロケット弾の攻撃などがあった04年10月から05年初めにかけてはすっぽり欠けている。
 その存否は不明だが、意図的に伏せているのではないかとの疑いが拭えない。これまで日報は「ない」としてきた陸自だ。日報は昨年3月に陸自研究本部で見つかったが、小野寺防衛相に報告があったのは約1年たった今年3月末。組織的な隠蔽(いんぺい)のそしりは免れず、抜け落ちた日報にも同様の疑念が湧く。
 なぜ、その期間が欠落しているのか。本当にないのか。引き続き調査を徹底するべきだ。肝心の部分がないのでは、自衛隊活動の全容は見えず、「非戦闘地域」の検証もままならない。
 自衛隊のイラク派遣を認めたイラク復興支援特別措置法が成立した03年当時、米英軍が占領統治するイラクでは戦闘状態が続いていた。イラク派遣は「自衛隊初の戦地派遣」とされ、日本の安全保障政策の転換点ともなった。
 その活動がしっかり検証されないまま、集団的自衛権の行使などを認めた安全保障関連法が16年、安倍晋三政権の下で施行。これにより「非戦闘地域」の概念はなくなり、「現に戦闘行為が行われている現場以外」なら自衛隊が活動できるようになった。
 さらに安保法の施行に伴う「駆け付け警護」などの新任務により、自衛隊員のリスクは高まることが想定される。
 今からでも遅くはない。イラク派遣だけでなく、過去の海外派遣を含めて自衛隊の活動実態を精査し、その教訓を踏まえて安保法の見直しなどの議論が必要だろう。