東アジアの命運を左右する一連の首脳外交の過程だとすれば、まだ「序章」でしかない。何一つ安心はできまい。
 米国フロリダ州パームビーチで行われた日米首脳会談。安倍晋三首相とトランプ大統領は、北朝鮮の非核化に向け最大限の圧力を維持する方針で一致した。
 日米の協調路線を明確に示し、改めて両政府の結束を確認した意味は小さくない。
 北朝鮮は勝手放題に核・ミサイル開発を進め、日米をはじめとする国際社会を威嚇してきたのだから、当然と言えば当然のことだ。
 金正恩朝鮮労働党委員長は朝鮮半島の段階的な非核化を前提に、見返りの提供と体制維持の保証を求めている。そんな虫のいい話はない。
 6月上旬までに開かれる米朝首脳会談でトランプ氏が安易な合意に走らないようくぎを刺すのが、今回の日本側の目的の一つでもあった。
 ところが、米国は今回、対北朝鮮強硬派のポンペオ中央情報局(CIA)長官が金氏と極秘に事前協議していた事実を表明。非核化実現のプロセスを具体化させていたことが分かった。政権の「本気度」を印象づけたが、この動きがどう転ぶかは見通せない。
 現に、トランプ氏は共同記者会見で「実りがないと分かれば(会談に)行かない」とも発言した。この先、何が起きても不思議ではない。
 ただ、米朝会談の場で拉致問題を取り上げるよう頼んだ日本は、この機は絶対逃せない。「最大限努力する」と約束したトランプ氏にすがるしかないのが実情だからだ。
 日本を射程に収める短・中距離ミサイルの廃棄も含め、米国頼みの追随姿勢が一層鮮明になったともいえる。
 日本政府は関係各国から置き去りにされないためにも米政権との連携を緊密にし、情勢の把握に努めるべきだ。
 第2ラウンドの通商問題では一転、両国の立場の違いが明確になった。
 米国の対日貿易赤字は年690億ドル。トランプ氏はそのことを取引上の敗北と捉えている。会談では2国間の貿易交渉を強く主張したが、「環太平洋経済連携協定(TPP)が日米にとって最善」とみる安倍氏と折り合わなかった。
 両首脳は「自由で公正な貿易のための日米協議」という新たな交渉の枠組みを設けることで合意したものの、隔たりは歴然としている。
 米国が3月に発動した鉄鋼などの輸入制限措置については「協議で合意しなければ適用除外しない」と強硬姿勢を貫く。今後も一対一の交渉で、農産物の大幅な市場開放などで日本に譲歩を迫る局面が増える可能性はあろう。
 共に内憂外患で頭を悩ます首脳同士である。自国の国益を第一にするのは当然としても、多国間の協調や世界全体の利益にも考えを巡らせてほしい。戦う相手をあえて増やすことはないのではないか。