命を守るため、どう備えればよいのか。「わがこと」として、自治体や住民一人一人が土砂災害対策に思いを巡らす必要がある。
 大分県中津市の耶馬溪(やばけい)町の集落が襲われた大規模な山崩れでは、幅200メートル、高さ100メートルにわたって裏山が崩落した。住宅4棟が巻き込まれ、5人が死亡、1人の安否が分からない。
 大雨や地震があったわけでもないのに、山が突然崩れた。山林が国土の7割を占める日本。山林の崩壊メカニズムを究明し、今後の防災・減災に生かすことが重要だ。
 災害はいつ、どんな形で起きるのか分からない。地域や自治体は土砂災害について、危険箇所の把握や備えを急がねばならない。
 耶馬溪町の現場一帯は、火砕流による堆積物や溶岩が風雨で浸食された脆弱(ぜいじゃく)な地盤だという。大分県は昨年3月、崩落現場を土砂災害防止法に基づく土砂災害特別警戒区域に指定。「非常に危険だった」と認めている。
 「特別警戒区域」は宅地開発が規制されるほか、移転の場合は補助が受けられる。著しく危険とみなされた区域だったが、十分な対策は取られていなかった。
 これは「ひとごと」ではない。東北6県では今年2月末現在、土砂災害の際、住民に危害が生じる恐れのある「警戒区域」は2万7160カ所、このうち特に危険とされる「特別警戒区域」は2万1808カ所に上る。
 青森県や山形県は、危険だとされる区域全てを土砂災害警戒区域に指定し、指定が完了したのに対し、宮城県は対象の8482カ所のうち、実際に指定したのは4133カ所(3月30日現在)。指定率は50%に満たない。
 指定区域を抱える市町村は災害情報伝達や避難の体制を地域防災計画で定め、ハザードマップを作って住民への周知が義務付けられる。宮城県は、遅れている指定作業を早急に進めてほしい。
 住民側も意識の見直しが求められる。自分が住む場所は安全かどうか、周囲の災害リスクを知る努力が必要だろう。日頃から周囲の状況に目を配り、異変を察知できることも大切となる。
 大分県中津市の山崩れでは、ある家族は山が崩れる前、自宅の壁に石がぶつかるなどしたことから家を飛び出し、間一髪で助かっている。2、3日前から「ゴー」という地鳴りがしたり、山から石が転がる音が聞こえたりしたとの証言もある。
 山崩れの予兆現象だった可能性が高く、山の異変を住民が共有し対処できていれば、との思いが募る。
 崩落現場は、過去にも何回か山が崩れているという。地域の災害の記憶や経験を受け継ぐことも欠かせない。
 個人や行政だけの防災は限界がある。地域でわが身を守る心構えを磨きたい。