3.11の記憶や教訓を被災地としてどう伝え継ぎ、内外に発信していくか。遅れていた東日本大震災の伝承と防災啓発の統合的な展開がようやく本格化することになる。
 宮城県が昨年夏に発足させた有識者による検討会議の議論が3月末に終了し、県としての震災伝承の考え方や具体化の方向性がまとまった。
 「震災と同じ犠牲と混乱を繰り返さない」を基本理念に掲げ、官民連携の拠点組織の創設により、伝承の複層的なネットワークを構築する。
 県民総参加による「防災・減災の地域文化の創造」まで目指す内容であり、被災県の責務と覚悟が読み取れる。
 震災から既に7年が経過し、風化の進行や伝承の難しさが現実化していることを踏まえれば、もはや理念の確認をしている段階ではない。
 「周回遅れ」とも言える現状を踏まえた上で、宮城発の新しい災害伝承のかたちを示せるか。発災10年の大きな節目を控え、スケジュール的にはぎりぎりの時期にある。
 焦点になる伝承拠点組織の立ち上げ、関連施設の整備など理念の具現化に、県は早急に取り組む必要がある。
 有識者会議は伝承の主体を行政や研究機関、企業、メディア、民間組織、住民など「全ての県民」と確認した。
 震災で被災したかどうかにかかわらず、津波被災がなかった内陸部の団体、住民も含め、県民運動として伝承と防災発信に取り組む考えを基盤に据えた意義は大きい。
 ことし6月で40年になる宮城県沖地震、10年になる岩手・宮城内陸地震など大災害をたびたび経験した地域として発信できる知見は幅広い。
 震災被災では沿岸部だけでなく、避難先や復興支援地として内陸部が果たした役割も伝え継ぐべき記憶になる。
 構えが大きくなるだけに散漫な取り組みに終わらないよう、点在する既存の施設や語り部活動などを有機的につなぎ、全体で発信の総合力を高める機能こそが鍵になる。
 その機能を発揮しネットワークを運営する官民連携の拠点組織の必要性は、有識者会議で特に強調された点だ。
 ともに公益法人として活動する阪神淡路大震災のひょうご震災記念21世紀研究機構(人と防災未来センター)、新潟県中越地震の中越防災安全推進機構のように、公的な資金に裏打ちされた責任ある伝承と啓発の拠点組織の立ち上げは、必須の状況にある。
 資金や人員、予算はどの程度にするか、本拠はどこに置くか、展示公開施設を伴うのか、調査研究を担うのか。
 拠点組織を作る上で精査が必要な項目は多いが、理念が明確になったからには早期に準備組織を設け、具体的に動きだすことが先決だ。
 未曽有の震災を経験した地域として、宮城県と県民は特別の覚悟をもって伝承に取り組む-。強い姿勢とメッセージを内外に示してほしい。