米中両国の貿易摩擦への懸念が世界に拡散している。行き過ぎの保護主義に対し国際社会が一丸となって調整力を発揮すべき局面だ。
 世界経済のリスク管理を主導する20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が米ワシントンであった。米国を念頭に、自由貿易を阻む保護主義的政策に反発する各国の訴えが相次いだ。
 世界の成長を支えるべき米国が、自国のために輸入制限を発動。中国が報復措置で応じるなど抜き差しならない状況だ。経済のけん引役どころか危機そのものといえる。
 この1カ月の間にも摩擦は進み、先行き不透明さは市場の動揺を誘いかねない。今こそG20の結束が問われる。
 しかし、今回の会合は各国の不満の表明に終始した感がある。そもそも共同声明をまとめる予定すらなかった。
 議長国アルゼンチンのドゥホブネ財務相は閉幕後の記者会見で「意見対立があり、全会一致にはほど遠かった」と打開策を示せないG20の限界に言及した。それでは世界の要人らがわざわざ集まり議論する意味がない。
 3月の会合では「保護主義に対抗するため関係国に対話と行動を促す」とした共同声明を採択。一方で「正当な対抗措置」を容認した昨年7月のG20首脳宣言を再確認する形で、米国に配慮した。
 このことを盾に米側が強硬な保護主義策を連発しているとの見方もある。今回もムニューシン米財務長官は孤立無援になりながらも「輸入制限は保護主義でない」と自国の正当性を主張し続けた。
 確かに「中国の鉄鋼などの過剰生産は保護主義に走る理由の一つ」との指摘もある。だからといって、急成長分野を狙い撃ちするあからさまな規制は公正さを欠く。
 G20が具体的な成果を出す努力を怠り、米政権の自国第一主義に手をこまねいているだけだとしたら、事態の収拾が見込めないのは当然だ。
 世界の同時成長を支えるのは活発な貿易だ。高い関税をかけ合う消耗戦は、貿易規模の縮小を招き景気を大きく冷やす。結果的に世界的不況の引き金に手を掛けかねない。
 米国側が「中国訪問を検討している」と摩擦解消に向けた動きを見せ始めたのはかすかな光明だが、見通しは不透明だ。各国は「内向きの政策はどの国の利益にもならない。貿易不均衡は多国間で解決を」(麻生太郎財務相)といった警鐘を粘り強く鳴らしていくほかないだろう。
 来年、日本はG20の議長国になる。米国が意欲を燃やす2国間交渉に恐々とし、できるだけ事を構えたくないのが今の日本の立場だ。
 しかし、厳しい対立の中でわずかな合意の糸口を探るのが議長国の務め。自由貿易を支える強いメッセージをまとめ、G20の存在意義を示すことができるか。日本のリーダーの手綱さばきが問われる。