自治体は他山の石とすべきだろう。安倍政権を揺さぶっている公文書管理である。
 公文書は「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」である。そう公文書管理法に書いてある。法は自治体に対し適正管理の努力義務も定める。
 自分たちの手で自分たちのための政治を行うには、仕事を任せている政治家や公務員がどんな考えで、いかに仕事を進めているかをチェックできなければならない。
 自衛隊日報や森友学園の問題ではチェックの判断材料となる公文書が隠されたり、勝手に書き換えられたりしていた。それで「民主主義の破壊だ」と大騒ぎになっている。
 足元を振り返ってみる。国政も大事だが、自分が住んでいる町の民主主義は機能しているだろうか。判断材料をチェックできるよう環境が十分に整えられているだろうか。
 全国的にはお寒い状況にあることが、総務省の調査で明らかになった。公文書管理条例を制定している自治体は2017年10月時点で、全体の1%に当たる21自治体にすぎないというのだ。
 調査によると、条例制定済みの都道府県は東京、鳥取、島根、香川、熊本のわずか5都県。政令市は札幌、相模原、名古屋、大阪の4市のみ。市町村は12にとどまり、東北では秋田市だけ。全体の92%に当たる1638団体は規則、要綱などでルール化し、ルールがないところは全体の7%の116団体もあった。
 規則などを含め管理のルールがある約1600市区町村(政令市を除く)のうち、保存期間が過ぎた文書の全てを廃棄すると答えたのは40%に上る。「一部の永年保存」は半数を下回る47%、「一部を公文書館等に移管」は13%だった。
 自治体の規則などは議会の審議を必要とせず、森友問題でも明らかなように公務員の恣意(しい)的な判断で文書が廃棄されてしまう恐れがある。まずは住民代表でつくる議会の場で条例を作り、文書管理の手続きを透明で検証しやすいものにすべきだろう。
 自治体によっては「条例化すると管理体制づくりで人的、資金的手当てが必要になる」と及び腰なところもある。だが公文書を何のルールもなく、あるいは緩いルールで次々に捨て去る状況を放置すべきでない。今取り組まないと東日本大震災の被災地で、後世に残すべき震災関連公文書が廃棄される心配もある。
 まずルールを作り、重要な文書を選別し、経費を節約し残していく手があるはずだ。統廃合された学校校舎に文書を置くのも方法だろう。公文書への理解と知識を持ち、保存の正しい判断ができる人材も必要だ。自治体がそうした人材を抱えることは、地域社会が健全に発展する基礎となろう。情報公開は地方が先行した。公文書管理も国を引っ張る取り組みがほしい。