大災害で自宅が損壊したものの個々の事情で仮設住宅や災害公営住宅に入れず、劣悪な住環境で暮らす在宅被災者の対策が遅れている。東日本大震災で顕在化した問題は2016年の熊本地震や台風10号豪雨で繰り返され、支援の隙間に陥る被災者が続出した。大災害の時代、早急な制度構築や法整備が求められる。
 石巻市の津波浸水区域には今、一見無傷に見える住宅が点在する。内部は津波で損壊。災害救助法に基づく応急修理の支援金や、被災者生活再建支援金など公的制度を活用して補修したが、資材や人件費の高騰で行き届かず、床下から雑草が生える家もある。
 一方、公的制度を使うと「居住する住家がある」と判断され、原則として仮設住宅に入れない。災害公営住宅も「住居に困窮していることが明らかな者であること」(公営住宅法)という要件に合致せず、入居を拒否される。
 石巻市は本年度、津波避難区域に住む在宅被災者を対象に、住宅補修費を最大76万円補助する独自制度を設けた。対象世帯数は4600。「復興へラストスパートをかける」(村井嘉浩宮城県知事)時期の制度新設が、在宅被災者対策の遅さを物語る。
 熊本地震では、在宅被災者の問題が「軒先避難」などとしてクローズアップされた。
 震度7の揺れに2度見舞われた熊本県益城町の場合、大規模損壊した自宅や軒先の倉庫で暮らす被災世帯が、今なお500以上ある。公的支援で応急対応したため仮設住宅に入れず、復旧工事の集中で修理のめどが立たない。
 東日本大震災と同じ事態が繰り返された事実は重い。
 在宅被災者は震災直後、被災者と見なされず、物資支援や情報提供が後回しになった。高齢や病気、障害で避難所に行けず、在宅避難を余儀なくされた事例もあった。時間がたつほど、無力感や諦めを抱く被災者が増えている。
 仙台弁護士会は15年11月から2年間、宮城県の沿岸自治体で在宅被災者563世帯の戸別訪問型法律相談を展開した。相談者は大半が65歳以上で年金受給者ら低所得者が多く、支援制度が実態に合わない現実が浮き彫りになった。
 同会は今年2月、8項目の提言を発表した。弁護士の側から災害弱者を訪ねて支援策を探る「アウトリーチ型法律相談」の法制化、被災者生活再建支援金の大幅増額を求めたほか、個別状況に合った支援を行う「災害ケースマネジメント」の構築を訴えた。
 東日本大震災では、住宅再建への公費投入など踏み込んだ対応があった半面、被災の規模、形態が想定を超え、支援制度の隙間が多数現れた。
 首都直下型地震や南海トラフ巨大地震が発生すれば、在宅被災者は10万人単位で発生すると言われる。復興に周回遅れする災害弱者を再び生み出さないためにも、過去の教訓を踏まえた対策が急務だ。