子どもを預かる組織として適切な「備え」がなされていたかどうか-。学校に事前防災の責任とその重さを突きつけた判決といえる。全国の全ての学校で、安全管理の在り方をもう一度、詳細に検証すべきだ。
 東日本大震災の津波で死亡・行方不明になった石巻市大川小の児童23人の19遺族が市と宮城県に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は26日、事前防災の不備を認め、市・県に約14億3610万円の支払いを命じた。
 控訴審の焦点は、平時における学校や市の防災体制の在り方だった。判決はそこに組織的過失を認め、過失がなければ児童らが犠牲にならずに済んだと判断した。学校の事前防災を巡り、法的責任を認めたのは初めてで学校現場に与える影響は大きい。
 判決は校長ら学校の管理職と市教委の対応を批判し、児童の安全を確保するため、職務上の義務を果たすべきだったとした。保護者から子どもたちの生命を託される学校としては当然のことだ。
 判決はさらに、大川小が北上川に近い立地条件などから震災前に地域の実情を検証していれば「津波の危険は予見できた」とした。一審では地震後に津波の到達を予見できたかどうかが争われたが、控訴審判決はそれ以前の備えに問題があったとした点が大きく異なる。
 市が作ったハザードマップも学校を避難場所としたのは誤りだったと明確に指摘。学校が2010年3月に改訂した危機管理マニュアルについては、津波の避難場所や避難経路などを定めていれば、津波を回避できたと校長らの過失を認めた。市教委はマニュアルの検証と不備の是正指導を怠ったとしている。
 こうした判決を市側は謙虚に受け止め、自らの誤りを深く反省すべきだろう。
 遺族側が勝訴した一審の仙台地裁判決は、地震後の教員の避難誘導の判断ミスを認めたが、マニュアルについては、震災前に津波は予見できず、「具体的な津波避難場所や避難方法を明記すべき義務はなかった」としていた。
 危機管理マニュアルは、09年4月施行の学校保健安全法で、全ての学校に策定が義務付けられた。今回の判決を踏まえ、各学校は単にマニュアルを作成するだけでなく、地域の状況に応じた適切な備えが求められる。不断に検討を加え、マニュアルの不備を是正する必要もある。
 控訴審判決が指摘しているように、学校に最も求められるのは、保護者の信頼と児童生徒の安全だ。従って極めて高度の注意義務が学校には課せられており、子どもの生命を守るために考え得るあらゆる手だてを事前に講じておかなければならない。
 安全な学校をどうつくるのか。児童74人、教職員10人が犠牲になった大川小の教訓を生かさねばならない。