どう繕っても、丸5年間にわたる政策の手詰まりの印象が拭えない。
 日銀は先月末の金融政策決定会合で「2019年度ごろ」を目標としていた物価上昇率2%の達成時期を政策運営の指針「展望リポート」から削除した。異例の措置である。
 13年4月からの大規模な金融緩和策は「2年程度」での2%達成を想定した。それ以後、昨年7月までに計6回も時期の先送りを余儀なくされてきた。
 19、20年度の物価上昇率見通しは1.8%にとどまる。黒田東彦総裁は「目標の実現をできるだけ早期に目指すことに変わりはない」と言うが、ゴール時期を曖昧にしてどのようにして立て直すのか。丁寧な説明が求められる。
 時期削除の理由で黒田氏は「達成できない場合、追加の緩和に踏み切ると誤解される」と強調。不確実な期限を示せばかえって政策の自由度が縛られ、日銀の信認にも影響する。書き込まないのが得策というわけである。
 説得力に乏しい。思惑通りに物価が上がらなかったのは消費増税による消費の冷え込みや、原油の下落などその時々の要因も関連した。ただ、物価安定の指標として「2%」は決して高過ぎるハードルではなかったといえる。
 世界経済の拡大局面の中、達成期限を明示した中央銀行は日本だけだった。異次元緩和策を始めた当初は、デフレとの決別に向けた思い切った「短期決戦」が日銀の狙いではなかったか。
 今回の文言削除は、5年を経て目標達成の困難さを明瞭に示しただけでなく、「長期戦」に持ち込んで局面の好転を待つしかなくなった日銀の立場もはっきりした。
 「ゼロ金利」は維持するものの追加緩和には踏み切らない。進めれば副作用が拡大する懸念があるからだろう。
 長期に及ぶ低金利による地方銀行など金融機関の収益悪化や、保険・年金の運用難などが挙げられる。土地、株式の資産バブルが誘発されれば、いずれ価格の急落をもたらすことになる。金融政策は万能薬ではない。円安・株高の誘導役は果たせても新たな付加価値を生む処方箋は描ききれない。
 指標を見る限り景気は拡大している。半面、物価が上がらず賃金も上昇しないから個人消費に結び付かない。この状態が続く以上、国民の将来不安が消えないのは当然だ。
 早晩、景気が下降局面に入った時、すでに大規模緩和を断行している日銀に残された手持ちの政策は限られよう。
 異次元緩和策を終わらせる「出口戦略」について日銀は否定的だ。だが「2%達成」の目標とは別に、金融政策の検証も果断に進めることが可能になったのではないか。
 市場が日銀と政府に期待するのは、デフレからの確実な脱却と、常識的で安定した金融政策であろう。