史上初の米朝首脳会談を前に、それぞれの思惑を抱いての鼎談(ていだん)はどこまで議論を深めることができただろう。
 日本の安倍晋三首相、中国の李克強首相、韓国の文在寅大統領による3カ国首脳会談がきのう、約2年半ぶりで東京であった。これに合わせたかのように北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長も7~8日、中国の習近平国家主席と再会談し、また世界を驚かせた。
 北東アジア外交が北朝鮮の非核化問題を焦点に、かつてないほどの目まぐるしい展開を見せる。隣国同士が利害を抱えつつ、どうやって地域の安定を築けるかが問われる。
 3カ国会談では、4月の南北会談での「板門店宣言」を日中両首脳が評価。「北朝鮮の完全な非核化」に向けた連携を確認した。
 非核化の実現を巡っては、安倍氏が北朝鮮の核を含む全ての大量破壊兵器と弾道ミサイルについて「完全かつ検証可能で不可逆的な方法での廃棄を」と主張。譲れない一線を強調したが、中韓両首脳は「北東アジアの安定が必要」(李氏)、「朝鮮半島の冷戦構図を解体したい」(文氏)などの発言にとどめた。
 北朝鮮との距離感や思惑の違いを浮き彫りにしたといえる。過去の失敗を教訓に「最大限の圧力をかけ続ける」と国際社会が合意した制裁措置を、周辺3カ国がそろって維持できるかは疑問だ。
 実際、北朝鮮の後ろ盾として存在感を強める中国は、7日の中朝会談でも蜜月ぶりを演出。北朝鮮が抱く非核化プロセスや安全保障上の懸念に理解を示したという。米国主導で進む朝鮮半島戦略の枠組みに割って入りたい意図が透けて見える。
 南北会談で民族の融和と自主統一の機運づくりに成功した韓国は、非核化の先にある「半島の恒久的平和」という大義が最優先だろう。
 「核、ミサイル、拉致」の懸案を包括的に解決することが宿願の日本は、拉致問題の解決に向けた要請で中韓の理解が得られた。
 金氏が「いつでも対話を行う用意がある」と南北会談で語ったというが、額面通りに受け取るわけにはいくまい。北朝鮮に毅然(きぜん)とした姿勢で臨みつつ、自力で日朝会談の機を模索しなければならない。
 日中韓会談は、未来志向の関係構築をと2008年から持ち回り開催を開始。経済、防衛など広範なテーマで連携を探ってきた。今回、3カ国の自由貿易協定(FTA)の交渉加速化や経済協力推進などでも合意し成果を上げた。
 2カ国間では折り合えない課題が多い中、日中韓で協議すれば地域の新たな将来像につながる前向きの議論ができるという確信を共有しているからだろう。
 北朝鮮の非核化は、北東アジア地域の安定だけでなく、世界の核拡散防止に関わる重要な問題だ。周辺国が内向きであってはならない。