話題のアニメの魅力をクリエーターに聞く「アニメ質問状」。今回は、中学生の淡い恋を描くオリジナルアニメ「月がきれい」です。フライングドッグの南健プロデューサーに作品の魅力を語ってもらいました。

 ーー作品の概要と魅力は?

 思春期の中学生の恋模様を描くオリジナルアニメです。小江戸と称される埼玉県・川越の街並みを舞台に、普通の中学3年生が普通に出会い、普通に恋をする。アニメが本来得意とする現実離れした出来事は何も起きませんが、現実的な日常を丁寧に描くことで、登場人物の心情をより豊かにお伝えすることに一番力を入れています。

 中学生たちの一喜一憂に感情移入してやきもきするもよし、親や親せきのような目線でほほえましく見るもよし、登場人物たちの思春期の一年間を画面を通じて共有していただければ幸いです。

 ーーアニメにする時に心がけたことは?

 何よりもまず、実際の中学生ってどんなんだったっけ?ということです。私も岸(誠二)監督も脚本の柿原(優子)さんも、中学時代はかなり前のことですし、都合よく思い出せないことも、思い出したくないこともいくつもあります(笑い)。とはいえ、作品コンセプトは決めちゃいましたし、やるとなったらやるしかありませんし、格好つけてもいられませんので、まずは自分と身の回りの中学時代のことを出来事、思いなど含め語り合いました。ツラかったです。

 もちろん、今の中学生のことは分かりませんので、知り合いのつてを頼って親戚や友人のお子さんら現役の中学生からもたくさんお話を聞きました。その結果、何となく分かったのは、「スマホを持ってるというほかは、我々の時代とそんなに変わらないね」ということ。世代差よりも個人差の方が大きいということを確認して、制作に入っていきました。

 ーー作品を作る上で大変だったこと、うれしかったことは?

 普通の日常生活をアニメで描く、というのは実はとても大変な作業です。ロボットや宇宙船が動いたり、魔法や必殺技がさく裂する瞬間を描くよりも、人間の何気ない仕草や表情を描く方が難しいんです。そういう意味で、監督以下、現場は現在進行形で日々大変ですね。

 私の担当であるプロデュース業務でいうと、単純に商売が大変です。近年は放送前に欧米や中国の配信会社に権利をライセンス販売して制作費の大半を賄う、という作品も多く見られるようになりましたが、それには原作が売れているとか派手な絵柄や題材といった事前の期待値というものが必要です。

 そこへいくと本作は、事前にお見せできる情報が絵も言葉もとにかく地味ですから、こちらが期待するような高額の評価がもらえない。結局、アタマを切り替えて当社の本業であるビデオ販売を盛り上げるべく、いろいろと考えることになるのですが、一つの試みとして通常より大幅に安い価格を打ち出すことにしました。私としては、作品性と時機を見て、より可能性のある方法を選んだだけのことですが、社内でも抵抗が強く、大変でしたね。

 うれしかったのは、やはり放送開始以来の皆さんの感想です。今回は原作にあたるマンガや小説がありませんので、本作が褒められるということはすなわち、関わったスタッフが褒めてもらったということ。ほかの誰のおかげでもありません。これは本当にうれしいことですし、スタッフみんなが今後の自信にしていいと思っています。

 ーー今後の見どころを教えてください。

 この記事が出る頃は、各地でちょうど第6話が放送される頃ですね。これで前半終了、1回お休みをいただいて前半を振り返っていただき、後半へ突入というところです。後半は夏休みから始まります。彼らは中学3年生なので高校受験という関門がリアルに迫ってきます。

 公立中学が舞台ですから、これまでは「近くに住んでいる」というだけで決まっていた学校が、初めて選択の対象になります。それはもちろん、将来へ向けた初めての選択です。初めて意識する、恋人との将来。そして千夏や比良の思い……。卒業までの彼らの思いと行く末を、温かく見守っていただければ幸いです。

 ーーファンへ一言お願いします。

 最初、岸監督に「次はこんな作品を作らないか」と声をかけてから、はや2年半。まだやっと半分完成したところなのでもう少し頑張らないといけませんが、放送開始からの多くの皆さんからのご好評にとても励まされています。現場のスタッフも大変な中、皆さんの応援を励みに頑張っています。

 何ていうことのない、誰の身の回りにもありそうな思春期の少年少女のお話ですが、クラスメートや親戚の子を見るような目線で彼らの恋と成長を最後まで見守っていただけますよう、引き続き応援のほどよろしくお願いします。

フライングドッグ 映像制作部 プロデューサー 南健

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