俳優の織田裕二さんが、大手銀行の監査役に扮(ふん)するWOWOWの「連続ドラマW 監査役 野崎修平」(権野元監督)が、14日にスタートする。周良貨さん作、能田茂さん画による経済マンガが原作で、バブル経済が崩壊した1990年代末を舞台に、不良債権を隠し通そうとする銀行、その裏で暗躍する汚職政治家、さらに株主総会にのさばる総会屋を相手に、正義を貫こうと奮闘する銀行員、野崎修平の活躍を描いていく。痛快作だが、野崎が立ち向かう相手は「腹に一物あるくせ者ばかり」で、野崎を演じる織田さんは、「本当に気を抜くシーンがない」と苦笑する。織田さんに、撮影しているスタジオで話を聞いた。

 ◇不条理と戦う男に「疲れるぞ、大変だぞ」

 織田さんは台本を読んだとき野崎修平という人物を、「不条理と戦う男だな。しかも、カーブとかスライダー、フォークといった変化球を投げるようなキャラクターではなく、真っすぐにしか投げられない愚直な男」ととらえた。

 野崎は、おおぞら銀行地蔵通り支店閉鎖に伴い役員に昇進。取締役が不正を働いていないかをチェックする監査役に就任する。支店長時代は「取引先の相手の顔がきちんと見えている」好人物で、家に帰れば、よくできた妻と17歳の娘がいる。

 そんな男が、新たな役職に就いた途端、やくざまがいの総会屋や、同じ銀行にいながら、「エレベーターも別、フロアも別。口をきくどころか、同じ空気を吸ったことすらない遠い存在の頭取」らを相手に戦うことになるのだから、織田さんが野崎に「並大抵のことじゃない。怖いだろうな」と同情したのもうなずける。しかもそれが、リアリティーを重視するWOWOWのドラマで繰り広げられるのだ。「ああ疲れるぞ、大変だぞ(笑い)」と感じたのも無理はない。

 実際、撮影が始まってからは「楽なシーンがない(笑い)」そうで、比較的楽なシーンをあえて挙げるとすれば、第1話の監査役室での、瀧本美織さんが演じる秘書と、やる気のないほかの監査役とのやりとりで「ちょっとあったかな」という程度。それ以外は連日、古谷一行さん演じる頭取の京極雅彦ら手ごわい相手との息詰まるやり取りが続いており、さしもの織田さんでも「毎日、ビールを飲まなきゃやってられない(笑い)」ほどだったという。

 ◇同じ銀行員だが…

 織田さんは、同じWOWOWの「連続ドラマW 株価暴落」(2014年)でも銀行員を演じた。織田さんは両ドラマの違いを、「『株価暴落』が白黒画面で、ピシッとシャープに斬っていくような話だとするならば、こちらはカラフルな印象ですね」と表現する。その上で、「(野崎の)家庭が出てきたり、一流銀行にこんな人いるの?と思うような、それこそ総会屋と見間違うほどの(専務役の)武田(岸谷五朗さん)というキャラクターが出てきたりする」と解説する。

 また、「一見、マンガじゃないかと思われるようなこと(表現)があるかもしれません。でも、真実を基に描いている。(原作者の)周さん自身、もともと銀行員ですし、周さんとお会いして話を聞いたとき、いろんな銀行のいろんな要素、あのときのあの事件、というふうにいろんなものをミックスしているとおっしゃっていたので、それがまた(『株価暴落』で扱っているものとは)違います」と説明する。

 ◇「不条理を体験した人に見てほしい」

 正義を貫く男を演じることについては、一言「疲れます」と笑う。しかしその表情は、演じることを楽しんでいるようにも見える。「僕が演じる野崎は、どちらかというと学級委員長タイプ。しかも、原作を読むとモテそうだし、そのまま演じるのは無理だと思ったので、(原作のように)あんなにすてきではなく、あんなに軽やかでもない、もっと地べたをはいずり回っているような、愚直で、ぶきっちょで全然美しくない野崎にしちゃいました(笑い)」と明かす。

 ただ、そういった野崎を、特に原作ファンには受け入れられる人もいれば、そうでない人もいるだろう。それは織田さん自身も心得ており、「ただ、一つ思うのは、仕事をしていると、不条理なこととかあるじゃないですか。そのとき悔しい思いをした経験がある人は見てほしいです。そういう人が応援してくれたらうれしいですね」とアピールする。
 「銀行だ、監査役だと聞くと、堅い話じゃないかと思われると思いますが、真面目一本やりではなく、難しい話を知らなくても楽しめる作品になっていると思います」と胸を張った。ドラマは、14日から毎週日曜午後10時にWOWOWプライムで放送。全8話で第1話は無料放送。

 <プロフィル>

 1967年12月13日生まれ、神奈川県出身。1987年、映画「湘南爆走族」で主演デビュー。91年の主演ドラマ「東京ラブストーリー」の“カンチ”役で大ブレークし、その後、「振り返れば奴がいる」(93年)、「お金がない!」(94年)などのドラマを経て、「踊る大捜査線」(97年)で主演。映画化もされ、「踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!」(98年)をはじめ4作が劇場公開された。そのほか出演した映画に「ホワイトアウト」(2000年)、「T.R.Y. トライ」(02年)、「県庁の星」「(06年)、「椿三十郎」(07年)、「アマルフィ 女神の報酬」(09年)、「アンダルシア 女神の報復」(11年)、「ボクの妻と結婚してください。」(16年)などがある。
 (取材・文・撮影/りんたいこ)

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