東日本大震災からの復旧・復興が進む宮城県女川町で、中央復建コンサルタンツ(大阪市)の末(すえ)祐介(43)は町の担当職員が漏らす不安の声を耳にしていた。「出来上がったまちは本当に後世に引き継げるものだろうか」
 復興のスピードを落とさず、まちづくりの質を高めたい。そのために何をすればいいのか。担当者は頭を悩ませていた。
 復興まちづくりは、経験のない複数の大事業が同時に進行する。進行中の事業を別の事業とすり合わせようとすると新たな課題が持ち上がり、振り出しに戻ってしまう事態が起こっていた。

 解決策として編み出された仕組みが、2013年9月に正式発足した「復興まちづくりデザイン会議」だ。町長の須田善明(45)、都市デザインの専門家、担当職員、工事関係者らが一堂に会し、町民らにも広く公開して議論した。
 生煮えの課題を会議の俎上(そじょう)に載せる。多角的な視点からよりベターな解を探り、方針は町長の須田がいる場で迅速に決める。そして次の課題を洗い出す。
 専門家や技術者、担当職員らによる検討部会も設置し、技術的な課題や予算などを話し合った。
 デザイン会議では、住民も自由に意見を述べることができた。住民の声と専門家の知見、事業を実施する町職員や工事関係者などの意見が対等に交わることで、課題解決の突破口に知恵を絞り、実現可能なまちの姿を描いた。
 担当職員は「デザイン会議は復興のブレーキになりかねない取り組みだった」と打ち明ける。質を求めれば、長い時間を要するのが一般的だからだ。「しかし、時間を犠牲にせずに質を高めることができた。専門家が町民の声を取り入れ、実現可能なまちのデザインを会議や部会の場で描いてくれたおかげ」と語る。
 町の至る場所から女川湾を望める「眺望軸」は、デザイン会議の成果の一つ。災害公営住宅の外構、土地区画整理道路整備など異なる事業に「海の存在を最大限に生かす」という横串を刺すことで、それぞれの事業を調整した。女川湾の眺望を確保し、町の価値を引き出した。

 デザイン会議委員長の東北大災害科学国際研究所准教授の平野勝也(49)は「女川で面白いまちづくりができているのは、民間の力があってこそだ」と言う。
 デザイン会議委員の宇野健一(59)、小野寺康(55)らは会議の枠をはみ出し、店舗再建を図る店主らの相談に乗り、デザインや空間の利用法を助言。店主らはアドバイスに応じ、自ら統一感ある開かれた街並みを創り出した。
 「最速で、よいまちをつくろう」。住民や行政、専門家ら地域に思いを寄せる人々の熱意が呼応し、革新的なデザイン会議と実りある議論が実現した。
 「質とスピードの両立」。それが絵空事でないことを女川は示している。(敬称略)