目でレンズの役目をする「水晶体」が濁ることで見えにくくなる白内障。水晶体を取り除き、代わりに「眼内レンズ」を入れる手術が普及している一方で、手術への期待とその後の状態とのギャップに不満を持つ人も少なくないという。

◎コントラスト低下 光のにじみ/性能まだ発展途上

<所要時間約10分>
 水晶体はクリスタリンというタンパク質を含む細胞とそれを包む透明な袋でできている。白内障はクリスタリンが変質し、光の通過を妨げたり反射したりして起こる。
 変質の要因で多いのは「加齢」だ。誰でも年を取るにつれて、水晶体の濁りは増えてくる。
 視力低下のほか、霧が掛かったように視界がかすんだり、夜道など暗い場所で照明が乱反射してまぶしく見えたりといった自覚症状がある。
 手術のタイミングの目安は、症状が進行し、生活に支障をきたすようになったとき。超音波で水晶体の濁った中身を細かく砕いて吸引し、袋の中に眼内レンズを入れるという手術が主流だ。
 局所麻酔をかけての手術で所要時間は約10分。高齢者では、手術中のストレスで血圧が上がるなどのリスクはあるものの、全身状態が良ければ受けることができる。
 水晶体が硬く、超音波で砕けないなど特殊な場合は、丸ごと取り出すこともあり得る。その場合は眼内レンズを縫い付ける手術をする。

<細かい調節可能>
 眼内レンズには「単焦点」と「多焦点」があり、単焦点は文字通り、焦点が1点に固定される。焦点が合わないところを見る際には、眼鏡を使うことになる。
 「ピントを変えられないカメラみたいなもの。どこに合わせるかは元々の生活習慣に合わせて選択するのが普通です」と日本医科大病院(東京都文京区)の眼科部長、高橋浩教授は説明する。
 「本を読みたい人なら30~40センチ先、楽譜が読みたい人はもう少し離れたところが見えるようにといった具合に、手術前に計算してかなり細かく調節することができます」

<保険適用されず>
 これに対し、多焦点眼内レンズには二つないし三つの焦点がある。遠いところ、近いところなど複数の距離にピントが合うようになるのだが、「いくつか注意点がある」(高橋教授)という。
 まず、レンズがまだまだ発展途上にあり、夜に車のライトがにじんで見えたり、コントラストが低下したりと、クリアさに欠ける面がある。
 どこでも見えるようになるわけではなく、慣れるまで時間がかかる。さらに、単焦点眼内レンズと違って公的医療保険は適用されず、自己負担が30万~50万円となる。
 こうした点を理解した上で手術を受けた52件の事例を調べたところ、視力回復は良好だったものの満足度が低いため、結局、単焦点眼内レンズに交換した例が3件あったという報告もある。
 高橋教授は「大多数の患者さんは結果に満足しているが、不満を抱く人の割合は単焦点に比べると明らかに大きい。お金がかかり、期待度も高い割には効果がいまひとつで、不満につながりやすくなっている」と指摘する。