東北の近代と自由民権 友田昌宏 編著

 明治維新後の東北の自由民権運動の研究を、「多様性」「地域性」の視点に立って見直そうと訴える。近代史関係の歴史学者による共同研究である。
 戦後民主主義の流れの中で自由民権運動は、「民主主義の源流」と一定程度規定された。しかし歴史分析は、マルクス主義の視点での論争が中心。1980年代に迎えた「自由民権百年」を境に、以後は研究が停滞した。本書は一度その呪縛を解き、地域に残された資料を再検討してさまざまな角度から光を当てようという狙いだ。
 例えば宮城県。新聞資料を中心に調査したところ、民権結社が141あった。注目したのは視覚障がい者、女性、車夫、侠客(きょうかく)らによる結社があったことで当時、差別の対象とされた社会的弱者にスポットを当てている。「自由民権運動を幅の広いものととらえよう」と言う。
 戊辰戦争の主舞台となった福島県会津地方。これまでの研究では民意を代表する自由党員と、県政へ加担して弾圧に回る会津士族という対立の構図で語られたが、背景に「士族の政治的復活の願望があった」と説く。富を蓄積、力をつけた豪農層との溝は埋まらず、弾圧事件が起きたとする。
 山形県庄内地方ではワッパ事件が発生した。不当に税金を納めさせられた農民が立ち上がり、県政と真っ向対決、やがて自由民権運動へと転換していく過程を追う。「くずし字を活字化した資料の整理と利用も、まだ進んでいない」と一次資料の調査の必要性を、まとめの稿で書き込んでいる。
 編著者は東北大東北アジア研究センター助教。ほかに東北内外から7人の研究者が執筆している。
 日本経済評論社03(3230)1661=6264円。