東日本大震災の津波で犠牲になった石巻市大川小の児童23人の遺族が、市と宮城県に約23億円の損害賠償を求めた訴訟で、遺族側は和解ではなく判決を選択した。控訴審は事前防災の是非が焦点となっており、判決は全国の教育現場にとって新たな「指針」となる公算が大きい。「学校防災の礎になる判決を示してほしい」。遺族が判決を選んだ背景には、司法に託した強い思いがある。(大川小事故取材班)

 控訴審が結審した23日、亀山紘市長と村井嘉浩知事はそろって「和解による解決に至らなかったことは大変残念」との談話を出した。直前に仙台高裁が原告、被告の双方に和解の意思があるかどうか打診し、遺族が判決を求めたため、和解勧告は見送られていた。
 提訴直後の2014年5月、亀山市長は「提訴内容は納得できず、和解はしない」と公言し、争う姿勢を鮮明にした。方針が一転したのは16年10月、仙台地裁が学校の過失を認め、約14億円の賠償を市と県に命じた直後。市と県は早々と控訴を決める一方、和解に前向きな考えを打ち出した。
 和解は両当事者が協議し、謝罪や再発防止策など金銭以外の条件を盛り込める。ただ、「完敗」の回避など戦略的に利用されることもあり、市民が思い描く「仲直り」のイメージとは異なる例も少なくない。
 一方、判決は司法による詳しい事実認定が得られ、先例的価値を持つ。原告と被告は、こうした長短を比較考量しながら最善の解決策を探ってきた。
 園児5人が津波で亡くなった石巻市の私立幼稚園を巡る訴訟では、「園側が法的責任を認め、心から謝罪する」との条件を付け、控訴審で和解した。だが、謝罪は和解条件を記した書面にとどまり、遺族に対する直接の謝罪はなかった。
 大川小訴訟の原告となった児童遺族は一審から事前防災の不備を指摘し、「失われた命を無駄にせず、学校防災の向上につながる司法判断を望む」と一貫して訴え続けてきた。19遺族全員が判決を選択したのは、二度と同じ悲しみを経験する親が出ないよう、司法に願いを託したからだ。
 控訴審判決は災害時の対応を定めたマニュアルの在り方や、学校、教育委員会が果たすべき組織的責任に踏み込む見通し。これらは09年4月施行の学校保健安全法が明文化した内容でもあり、判決の内容次第では、子どもたちの「命」や「安全」を巡り、全国の教育現場が抜本的な改革を迫られる可能性がある。
 高裁判決は4月26日に言い渡される。