あふれんばかりの涙で両目は潤んでいた。会見場に入り、旧知の報道陣の顔ぶれを見ただけで、万感の思いがこみ上げた。「東北で、またイーグルスのユニホームを着て、プレーできると思うとぞくぞくする。本当にうれしくて、言葉にならない」。2010年12月9日、金銭トレードで退団する記者会見で号泣してから2548日目。夢のような瞬間を迎えた彼の気持ちは筆舌に尽くせない。
 「離れてもチームのことが気になっていた。できればもう一度このユニホームを着たいと思ってずっとプレーしてきた」。渡辺直のチーム愛を知っていた球団は、今季限りで西武を戦力外になったとみるや、復帰を打診した。本人は「野球をやりたい。でももう潮時か」と引退の考えもよぎった時だっただけに「信じられない気持ちになった」。
 当然、心は一つだった。プロ入りへ導いてくれた時の恩義もあり、「今野球ができているのはイーグルスのおかげ、という感謝の気持ちがある」と明かす。7年間過ごした2球団にも「いろいろ経験して野球人として、人間として成長させてもらえた」と感謝する。
 目指すは来季の日本一達成だ。09年球団初のクライマックスシリーズ(CS)進出に貢献したが、11年の東日本大震災を乗り越え、13年に初のリーグ優勝、日本一を達成した時は不在だった。西武ドームでリーグ優勝を果たした胴上げの瞬間は西武の選手として見守り、「楽天もここまで来たんだなあという思いと、見せつけられた悔しさがあった」と振り返る。
 さらに「今季のイーグルスを見て、強いと思っていた。来季日本一を成し遂げるために、自分もがむしゃらにプレーし、力になりたい」と意気込む。涙目だった両目はもう闘志に満ちていた。(金野正之)