高校野球の強豪、仙台育英高(仙台市宮城野区)で、選手寮に住む硬式野球部員ら生徒15人が青葉区の飲食店や寮内で飲酒、喫煙を繰り返していたことが判明し、佐々木順一朗監督(58)が辞任を表明した。佐々木監督は選手の自主性を重んじることでチームを強豪校に育ててきたが、自由と責任は表裏一体だ。部は不祥事を繰り返している。自由を履き違える部員が出ることを、またも止めることができなかった。

 問題が発覚したのは4日。3年の元部員が急性アルコール中毒で救急搬送されてから約1週間たっていた。その間、学校は事実を把握しておらず、10日に記者会見した佐々木監督は「寮の管理体制が甘かった」と悔やんだ。
 学校によると、多賀城市の寮は計5施設。野球部員以外の生徒を含む1、2年生用、3年生用などに分かれている。住み込みの職員が2人ずついるほか、佐々木監督も隣接する建物に住む。門限は午後7時とされているが、試合などで遅く戻る場合もあるため、午後10時に大部屋で一斉に点呼を取る。
 飲酒、喫煙が判明した8件中7件は午後6~11時ごろの出来事だった。佐々木監督は「家族と食事をするのは認めているので、点呼でいないとしても問題視しない。保護者に確認しなかったのが甘かった」と釈明。3年生については「玄関に柵もあり、良い子たちが多いから、部活引退後は本人に任せている状態だった」という。
 OBの一人も管理の甘さを指摘する。「点呼までの間にみんなが何をやっているか分からないし、外に出ようと思えば出られた」と振り返り、「僕らの代でも知らないところで同じようなことがあったかもしれない」と明かす。
 寮を厳しく管理する学校もある。東北のある強豪校は、生徒が外出する場合は保護者が文書で申請し、電話で申し出る場合は本当に保護者かどうかを確認するためにかけ直す。無断外出をなくすため、防犯カメラも複数設置している。
 この寮の関係者は「生徒から信用していないのかと言われるが、悪さをする生徒がいることは想定する必要がある。窮屈でも、人生を棒に振るようなことはさせられない」と説明する。

 チームを甲子園に導くこと19度。佐々木監督は選手の自主性を最大限に尊重し、数々の名勝負を生んできた。今夏の甲子園大会3回戦の大阪桐蔭戦が象徴的だ。
 1点を追う九回裏2死一塁、一走の杉山拓海選手が盗塁を試みて成功。敗色濃厚だった戦況を一変させた。失敗したら試合が終わるという場面。杉山選手はノーサインで走っている。選手への信頼があったからこそ、あの奇跡のような逆転劇が生まれた。
 一方で信頼を裏切る部員は後を絶たない。2001年には部員同士の暴行事件が発生。佐々木監督が一度、辞任している。11年4月は部員7人が東日本大震災の被災店舗に侵入したとして書類送検された。
 学校側は再発防止策として寮の管理体制を見直す方針だが、具体性に乏しい。不祥事を繰り返してきた以上、抜本的な対策が求められる。(スポーツ部・今 愛理香)

<仙台育英高硬式野球部員の不祥事>11月27日午後7~11時ごろ、3年の元部員と2年の現役部員各3人ら計8人が仙台市青葉区の飲食店で飲酒や喫煙をし、1人が嘔吐(おうと)して病院で手当てを受けた。発覚後、学校側の調査で同様の行為は3月下旬から計8件あり、一般生徒を含む計15人が関わっていたことが判明。佐々木順一朗監督と郷古武部長が引責辞任を表明した。野球部は来年1月9日まで活動を自粛する。