小中学校の次期学習指導要領改定案はLGBTへの視点が欠けているとして、遠野市の地域おこし協力隊員室井舞花さん(30)が文部科学省にパブリックコメント(意見公募)を送るよう呼び掛けている。自身も同性愛者で、思春期に保健の教科書の記述に苦しんだ。指導要領の改定は約10年ごと。「このままでは多くのLGBTの子どもが同じ経験を繰り返す」と訴える。
 室井さんが改定案で問題視するのは「思春期になると異性への関心が芽生える」などの記載。教科書作成の指針となる現行の指導要領解説にも同様の表現があり、それを反映した教科書に傷つけられたからだ。
 室井さんは中学2年の時、同級生の女の子に恋をした。教科書には異性愛のことしか書かれていない。「私はおかしいんだ」。混乱し、存在が否定されたように感じた。
 「誰にも知られてはいけない」「早く普通の子のように男子を好きにならなければ」。強い孤立感の中で悩んだ。そんな自分が許せないとまで思い詰めた。
 転機は19歳。世界を旅する非政府組織(NGO)ピースボートの船に約4カ月乗った。ある日、同い年の女性が同性愛者であることを堂々とスピーチした。
 「自分だけじゃなかった」。勇気づけられ、初めて肯定された気がした。船の中で友人に打ち明け始め、最後は交際相手もできた。
 以来、同性愛者であることを周囲に告白。2013年6月に東京都の団体職員恩田夏絵さん(30)と結婚パーティーを開いた。多様な性への理解を広めようと実名で発信し、昨年は体験をつづった本も出版した。
 根底にあるのは、LGBTの人に「あなたは間違っていない」と伝えたいとの思いだ。かつての自分が暗闇から救い出されたように、仲間がいることを支えに生きてほしいと願う。
 教科書表現の修正を求めて始めたインターネット署名活動には2万2000人以上が賛同。改定に向けた中教審教育課程部会の審議まとめへのパブリックコメントでは、2974件のうち1割強の368件がLGBT関連の意見だった。
 室井さんは「手応えがあっただけに改定案に失望した。LGBTの子どもは必ずクラスに1人はいる。彼らが存在しないかのような学習指導要領を変えることで、いじめや自殺のリスクを減らし、守れる命がある」と強調する。
 改定案に対するパブリックコメントは15日まで。文科省は今月中に次期指導要領を告示し、その後に要領解説を公表する。

[LGBT]レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(心身の性別不一致を感じる人)の英語の頭文字を取った性的少数者の総称。電通が2015年に約7万人を対象に実施した調査によると、LGBTに該当する人は13人に1人いるという。