東日本大震災の復旧復興は多様な事業が求められる。財源として復興基金は生かされているか。復興基金に詳しい東北工大の福留邦洋准教授に聞いた。(聞き手は報道部・伊東由紀子、村上俊)

◎東北工大准教授 福留邦洋氏に聞く

 基金の特徴は自治体が少ない負担で資金調達できる安定性、被災地のニーズに応じた事業の追加や拡充ができる柔軟性、将来のまちづくりを見据えて活用できる先駆性などがある。被災者の生活再建、長期的事業に有効な財源だ。
 過去には長崎県雲仙・普賢岳噴火災害(1991年)、阪神大震災(95年)や新潟県中越地震(2004年)でも創設された。過去の基金は、原資の運用益を活用することで使途の自由度を確保した。こうした「運用型」が東日本では低金利時代を反映し原資の「取り崩し型」に、運営主体も民間団体を含む財団法人から自治体直営に変わった。
 財団方式の場合、使途の決定など一定程度オープンだったが、自治体の直営方式は外から見えにくい。災害の規模、時代背景などが異なり、「これが正しい」と一概には言えないが、基金の取り扱い方が変化したのは確かだ。
 調査では、自治体の担当者さえ基金の特性や趣旨をよく理解していないと思われる事例がいくつかあると感じた。復興財源が複雑化する中、単なる「便利な財源」になっていないか懸念がある。
 行政は公平性を大事にするため、支援対象の平準化に基金を充てるケースが目立つ。「創造的復興」を進めるには、誰もが新しいことを始められるような機会の平等を確保し、やる気やチャレンジを引き出す発想も必要だろう。
 震災から6年。復興の局面は変わる。基金の存在や使途が一般に知られる機会は少なかった。執行が本格化し、基金の役割や可能性が広がるのはこれから。変化する被災者ニーズを把握する仕組みを整え、事業化するのが重要だ。
 被災地は震災前から少子高齢化に伴う課題を抱える。コミュニティービジネスや新しい地域づくり、福祉や医療の課題解決に向けても基金の活用が期待できる。基金の理念、特性を認識した上で、事業を立案し基金を充てられるか、自治体の才覚が問われる。
 使いやすさなど基金の利点は執行する行政だけのものではない。被災者が前に一歩踏み出すきっかけをつくる、という視点が欠かせない。