東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示が一部を除き解除される福島県飯舘村の老舗うどん店「ゑびす庵」が、現地での営業再開に向けて準備を進めている。村で再開する飲食店は初めて。「みんなが戻るきっかけになればうれしい」。経営する一家は村再生の一助になることを願う。
 ゑびす庵は高橋義治さん(70)、ちよ子さん(68)夫妻と次男の均さん(42)が営む。60年以上前に義治さんの両親が創業した。こしのある手打ちうどんが人気で、お茶を飲みに村民が集まる憩いの場になっていた。
 村が2011年4月に計画的避難区域に指定された後、2カ月ほど村に残って営業した。知人らの支援を受けて同年7月、福島市で店を再開。仮設住宅などから多くの村民が訪れ、新たな常連客も増えた。
 福島市で当面、営業を続ける予定だった。転機は15年秋。村の広報誌の取材を受けた義治さんが突然、「村に戻る」と宣言した。その場に居合わせなかったちよ子さんは夫の独断に驚きつつ、「お世話になった村に腰を据えよう」と考えるようになった。
 今年1月に再開準備を始めた。06年に建て替えた店舗の傷みは少なく、リフォームは外壁の補修程度で済む。福島の店舗を今月20日に閉め、4月中の現地での営業再開を目指す。
 ちよ子さんは店舗近くに建て直した自宅で、手芸サロンを開く計画も温めている。
 避難指示が解除されても村にすぐ戻る人は多くはなく、以前のように経営が成り立つかは分からない。
 「ぜいたくしなければ生きていける」とちよ子さん。義治さんは「村に戻った人が気軽に食事をし、酒を飲んでもすぐに帰れる以前のような店になるといい」と話す。