◎秋田新幹線20年(上)広がる県内格差

 秋田新幹線が22日、開業20周年を迎える。「こまち」の愛称で親しまれる列車は延べ約4400万人の乗客を運び、秋田県の交流人口の増加に貢献してきた。半面、集客効果は沿線にとどまり、県内の地域間格差は広がった。北海道、北陸など新幹線の相次ぐ開業で激しい競争にさらされる中、「はたち」になったこまちと地域の課題を探る。(秋田総局・藤沢和久)

<アクセス良好>
 今月前半の週末、仙北市のJR角館駅に到着したこまちから乗客約30人がホームに降り立った。多くは観光客で、古い町並みが残る武家屋敷や観光施設への送迎バス乗り場に向かった。
 「首都圏から予約があれば、到着時刻に合わせた無料送迎バスを案内している。この辺りは他の交通手段に比べて新幹線の利便性が高い」。劇場や地ビール工房、宿泊施設、温泉がある同市田沢湖卒田の「あきた芸術村」を運営するわらび座の管野紀子広報宣伝室長(60)はこう話す。
 芸術村は秋田新幹線開業前年の1996年にできた。角館駅から送迎バスで約10分とアクセスが良く、年間約24万人が訪れる。この20年で約6万人増えた。
 仙北市は田沢湖、角館両駅にこまちが止まる。市内には温泉郷や田沢湖、スキー場などの観光地もあり、県観光統計によると、2015年の観光客数は約454万人と、秋田市の約580万人に次いで多い。

<2次交通不足>
 ただ、新幹線の集客効果は沿線以外に波及しておらず、駅と観光地を結ぶ2次交通が整っていない市町村とは明暗が分かれる。
 大曲駅(大仙市)から約50キロ離れた湯沢市皆瀬の小安峡温泉の場合、15年の観光客数は約2万9000人と、1998年の約6万5000人から大幅に減った。
 最寄りの奥羽線湯沢駅を通る特急は新幹線開業後に廃止され、大曲駅か山形新幹線新庄駅(新庄市)からは普通列車で40分~1時間、東京駅からは4時間以上かかる。湯沢駅と温泉を結ぶ路線バスも1日4往復のみ。市観光物産協会皆瀬事務所の担当者は「電話で乗り継ぎを説明すると、『遠い』と敬遠する年配の方もいる」と肩を落とす。

<情報一覧化を>
 2次交通確保のため、自治体や観光協会などは乗り合いタクシー(男鹿市)や時間貸しタクシー料金割引(秋田市)などに取り組む。ここでも一歩先を行くのは仙北市だ。
 多くが事前予約制なのに対し、仙北市などで構成する田沢湖・角館観光連盟が1月からバスやタクシーで運行する「周遊パス」は当日でも予約なしで利用可能。田沢湖、角館両駅と市内の観光施設などを結んで1日6便走り、2000円で何度でも乗降できる。
 同観光連盟の佐藤強事務局長は「当日思い立って温泉や武家屋敷に日帰りで来る人もいる。他にも寄ってもらえれば、食事や買い物などで経済効果が広がる」と見込む。
 新幹線の集客効果を沿線以外に広げるには2次交通の充実が欠かせない。ノースアジア大(秋田市)の井上寛准教授(観光学)は、観光協会やバス会社など運行主体によって情報発信や予約方法に違いがあることを指摘した上で「情報を地域単位でまとめるなどの態勢づくりが必要だ」と語る。